一日一曲(1718)ガントレット、ヘンリー・ジョン:ダビデの町に
本日は、没後150年(1876年2月21日没)を迎えらえたイギリスの作曲家、ヘンリー・ジョン・ガントレットさんの曲をご紹介します。
【ヘンリー・ジョン・ガントレット:法律の専門家でありながら、イギリスの聖歌とオルガンの近代化を成し遂げた情熱の音楽家】
ヘンリー・ジョン・ガントレットは、1805年7月9日にイギリスのシュロップシャー州ウェリントンで、牧師の息子として生まれました。幼少期から並外れた音楽の才能を示し、わずか10歳で父の教会のオルガニストに任命されるほどでしたが、当初は音楽を職業とはせず、法律の世界へ進みます。1826年からロンドンで弁護士として活動し、法務に携わる傍らで、音楽への情熱を燃やし続けました。
彼の音楽キャリアにおける最大の転換点は、当時のイギリスのオルガンが抱えていた構造的遅れを痛感したことでした。当時のイギリス製オルガンは足鍵盤(ペダル)が不十分でしたが、彼はメンデルスゾーンとも親交を結び、ドイツ式の「C-コンパス」オルガンの導入を猛烈に推進しました。この改革は、イギリスのオルガン音楽を飛躍的に発展させる礎となりました。
1840年代にはついに法律の仕事を辞め、音楽に専念することを決意します。1846年にはバーミンガム音楽祭で、メンデルスゾーンの傑作オラトリオ『エリヤ』の初演においてオルガンを担当するという栄誉も手にしました。彼は生涯で約1万曲もの聖歌の旋律を書いたと自称しており、特に『ダビデの町に(Once in Royal David’s City)』などの旋律は、今なお世界中で愛され続けています。教会音楽の普及と質の向上に人生を捧げた彼は、1876年2月21日にロンドンのケンジントンにて、心不全により70歳でその波乱に満ちた生涯を閉じました。法律家としての論理的な思考と、音楽家としての深い芸術性が融合した彼の功績は、現代の英国教会音楽のスタンダードとして息づいています。
【本日のご紹介曲:Once in Royal David’s City(ダビデの町に)】
この曲は、セシル・フランシス・アレクサンダー夫人が子供たちのために書いた詩に、ガントレットが曲をつけたものです。イギリスのケンブリッジ大学キングス・カレッジで行われる「九つの聖書日課と賛美歌」の礼拝で、冒頭に必ず歌われる伝統的なクリスマス・キャロルとして有名です。
【聴きどころ】
1)静寂から始まる天使のようなソプラノ独唱
最も有名な演奏スタイルは、最初の一節を少年のソプラノ一人が無伴奏で歌い出す形です。静まり返った教会に響く澄んだ歌声は、イエス・キリストの誕生という奇跡の静かな幕開けを感じさせます。
2)徐々に厚みを増す「音のグラデーション」
最初は独唱、次に合唱が加わり、最後にオルガンの重厚な伴奏が加わるといった具合に、段階的に音が豊かになっていきます。この「だんだんと光が広がっていくような演出」が、聴く人の心を惹きつけます。
3)優しく語りかけるような、覚えやすい旋律
ガントレットが書いたメロディは、非常にシンプルで親しみやすいのが特徴です。それでいて、品格と温かさを兼ね備えており、クラシックに詳しくなくても、一度聴けば心に深く刻まれる美しさがあります。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ガントレット、ヘンリー・ジョン:ダビデの町に
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