一日一曲(803)カンテミール、ディミトリエ:ベステニガルの情景
本日は、生誕350年(1673年10月26日生)及び没後300年(1723年8月21日没)を迎えらえたルーマニアの作曲家、ディミトリエ・カンテミールさんの曲をご紹介します。
カンテミールさんはモルダヴィアでタタール系の血を引くモルダヴィア貴族カンテミール家に生まれました。お父様とお兄様はモルダヴィア公を務めた有力者であったとのことです。言語、文学、歴史の教育を受けた後、1688年から22年間をイスタンブールで過ごし、東洋の諸言語と文化、音楽を学びました。1710年に兄アンティオフさんの跡を継いでモルダヴィア公に任命されますが、翌1711年に始まったロシアとオスマン帝国の戦争においてオスマン帝国を裏切り、ロシアのピョートル1世に降伏するという道を選択します。これが大間違いで、戦争はピョートル1世の大敗に終わり、モルダヴィアを含めた占領地はオスマン帝国に奪還されてしまいます。カンテミールさんはロシアに亡命生活を余儀なくされ、ロシア貴族の待遇を受けて(公爵・宮廷顧問官)余生を送ることとなりました。失意の中、1723年にハリコフで亡くなられました。
語学の才能に優れ、ルーマニア語のほか、ラテン語、ギリシャ語、トルコ語、アラビア語、ペルシア語、ロシア語、スロヴェニア語、ハンガリー語、ドイツ語、フランス語、イタリア語を完全に習得していたと言われていますまた、諸学問に通じ、故国モルダヴィア・ルーマニアに関する歴史書、地理誌、哲学書など多くの著作を残していらっしゃるそうです。また、東洋の歴史と文化に対する造詣も深かったとのことです。
音楽方面では、オスマン古典音楽の作曲者としても知られており、40曲ほどの作品を遺されています。それらの作品は、アラビア文字を利用した独特の文字楽譜を考案し、それによって書かれています。彼の考案した文字譜は画期的なものでしたが、残念なことにトルコにおいて広まることはなかったそうです。
本日の曲は、その40曲の中の1曲です。アラビアの音階が使われていて、ちょっと聴いただけでその雰囲気の中に飲み込まれます。多才なカンテミールさんの音楽、ご堪能下さい。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
カンテミール、ディミトリエ:ベステニガルの情景