一日一曲(1116)タイユフェール、ジェルメーヌ:ヴァイオリンソナタ第1番嬰ハ短調
本日もフランス六人組のメンバーをご紹介します。本日は四人目、紅一点のジェルメーヌ・タイユフェールさんです。
タイユフェールさんは1892年にフランス北部の街サン=モール=デ=フォッセで生まれました。詩人コクトーに「耳のマリー・ローランサン」と呼ばれた、という逸話が残っています。亡くなられたのは1983年11月7日で、フランス六人組の中で一番長生きされ、かつ最後まで生き残られました。
本日は若い頃の作品、ヴァイオリンソナタ第1番嬰ハ短調をご紹介します。作曲されたのは1921年、作曲者29歳の時の作品です。二十世紀を代表する名ヴァイオリニスト、ジャック・ティボーに献呈されています。実は作曲当時、タイユフェールさんはティボーと愛人関係にあったとのことです。お二人で演奏されたことも当然あったのでしょう。どんな演奏だったのか、興味深いところです。この恋は報われず、疲れ果てたタイユフェールさんは「遊び人」であったアメリカ人の諷刺漫画家ラルフ・バートンに口説き落とされ、1925年に結婚したとのことです(バートンさんとは後年離婚)。
曲にはそのような背景はあまり感じられません。第1楽章のいくぶんのどかなメロディなど、落ち着いた魅力にあふれています。個人的に面白かったのは第4楽章。中間部、ピアノの和音の音型が繰り返される中、ヴァイオリンがピアニシモの低音を長く持続させる部分(2分50秒~4分6秒あたり)ですが1分以上も持続音を奏でるということは、他の曲では見当たりません。なかなか珍しい表現でユニークだな、と感じました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
タイユフェール、ジェルメーヌ:ヴァイオリンソナタ第1番嬰ハ短調