一日一曲(1196)シェーンベルク、アルノルト:ワルシャワの生き残り

 本日は、生誕150年(1874年9月13日生)を迎えらえたオーストリアの作曲家、アルノルト・シェーンベルクさん特集の5回目、最終回です。

 ナチス・ドイツが台頭すると、シェーンベルクさんはユダヤ人であることと、退廃音楽の代表格と見做されて、迫害の槍玉にあげられます。シェーンベルクは1934年にアメリカに移住することとなりました。移住後は南カリフォルニア大学(USC)とカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)にて教育活動を精力的に行い、はジョン・ケージやルー・ハリソンなどのアメリカ現代音楽を代表する作曲家などを指導しました。USCには彼の名にちなんだリサイタルホールを擁する「アーノルド・ショーンバーグ研究所」(Arnold Schoenberg Institute)があり、UCLAには彼の生前の功績をたたえ、記念講堂が建造されています。移住後は、『室内交響曲第2番 変ホ短調』(作品38)や『主題と変奏 ト短調』(作品43b)などの調性を用いた先祖帰りの作品のほか、旧作の完成や修正などが主な作曲活動となりました。1951年7月13日、喘息発作のためロサンゼルスにて76歳で亡くなられました。亡骸は故郷ウィーンに運ばれ、中央墓地に葬られてました。

 本日の曲はアメリカ移住後の晩年に書かれた、ナレーター・男声合唱と管弦楽のためのカンタータ「ワルシャワの生き残り」です。1947年、作曲者73歳の時の作品です。本曲はクーセヴィツキー財団からの委嘱によって作曲されました。委嘱を受けてから1ヶ月ほどで書き上げられたとのことです。この時、シェーンベルクさんはお年を召されていた関係で通常の五線譜に書き込むことが困難だったことから、五線の幅が通常の3倍ほどに拡大された大きな五線譜を使って作曲されました。そのような中で、僅か1か月という短期間に仕上げられたということから、本曲への並々ならぬ意欲が感じられます。

 本曲では、死の収容所で処刑されようとした一群のユダヤ人の恐怖体験が表現されています。曲の終わり近く、これからガス室へ送られる窮地に立たされたユダヤ人たちが一斉に祈りの歌「シェマ・イスロエル(聞け、イスラエル)」(申命記6:4-7)をヘブライ語のアシュケナジム式発音で歌う場面が、本曲のクライマックスです。十二音音楽がホロコーストの残忍さの表現にピッタリとマッチしています。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
シェーンベルク、アルノルト:ワルシャワの生き残り

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