一日一曲(1216)ヒンデミット、ルドルフ:7つの前奏曲とフーガ
本日は、没後50年(1974年10月7日没)を迎えらえたドイツの作曲家兼チェリスト、ルドルフ・ヒンデミットさんの曲をご紹介します。
ルドルフ・ヒンデミットさんは、ドイツの生んだ20世紀を代表する大作曲家であるパウル・ヒンデミットの5歳下の弟にあたります。お兄さんとは一緒に弦楽四重奏団を結成してお兄さんはヴィオラ、ルドルフさんはチェロで一緒に演奏していたこともありました。華々しく活躍するお兄さんとは対照的に、ルドルフさんは近年まで、(少々申し訳ありませんが)影が薄い存在でした。常に兄の後塵を拝する。そのことに対するいろいろな感情などは、ご本人でなければ正確なところは分かりませんが、ルドルフさんの人生を振り返ってみると、そうとうしんどいことだったように推測されます。結成した弦楽四重奏団は早々と脱退、クラシック音楽から一時離れてブラスミュージックやジャズのジャンルに転向したこともありました。お兄さんは1938年にナチス・ドイツから逃れてスイスに移住しましたが、ルドルフさんはドイツに残る選択をとり、指揮者として活躍、さらにはクラクフの一般政府の交響楽団を率いていたときもあったとのことです。第二次世界大戦後は、ルドルフさんは作曲家、指揮者、教育者として活躍することがゆるされました。「ヒンデミット」と呼ばれるのを避けるために、「ポール・クエスト(Paul Quest)」や「ハンス・ローファー(Hans Lofer)」など、多くの偽名を使用していたそうです。1974年、ミュンヘン近郊のノイペルラッハで74歳で孤独死されたそうです。墓石には「ハンス・ローファー」というペンネームが刻まれていた、とのことです。ようやく近年、オペラ、ピアノ協奏曲、室内楽、ピアノ曲の作曲家として再発見されている、とのことです。
本日の曲は「7つの前奏曲とフーガ」、ピアノ曲です。7つということがちょいと引っ掛かります。こういった曲集を作る場合、24曲ひとまとまりで作ることも多く、そこまでいかずに7つで終わっている点です。後のち24曲までつくるつもりであったのか、それともこれで完成だったのか、興味深いところです。ピアノ曲のソナチネが7番まであるようでして、もしかしたら「7」というのはルドルフさんにとって特別の数字だったのかもしれません。
本曲、面白く聴けました。再発見されたのもうなずけます。全体的に暗めの曲が多いです。この雰囲気、兄の陰に隠れて屈折した人生を送ってしまったルドルフさんの思いも影響しているのかもしれません。前奏曲では第1番と第2番、フーガでは第4番が、個人的に印象に残りました。大部分の曲は1分前後の演奏時間、一番長い第6番のフーガでも2分少々と、とても短い曲で構成されています。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ヒンデミット、ルドルフ:7つの前奏曲とフーガ