一日一曲(1511)テオドラキス、ミキス:主題と変奏
本日は、生誕100年(1925年7月29日生)を迎えらえたギリシャの作曲家、ミキス・テオドラキスさんの曲をご紹介します。
テオドラキスさんはエーゲ海東部に位置するヒオス島で生まれました。若い頃から左派政治家としても活動し、第二次世界大戦時にはレジスタンスとして逮捕された経歴もお持ちです。戦後の内戦時も左派として活動し、その後パリに逃れ、そこで音楽を勉強、その後ギリシャでのポピュラー音楽、映画音楽と幅広い分野で作曲活動を行いました。1967年には軍事クーデターに反抗して逮捕されました。釈放後は、軍事政権崩壊までパリで過ごした。1981年からのべ10年国会議員として活躍し、大臣も経験されました。2007年3月にはレジオンドヌール勲章を受章されました。2021年9月2日に、96歳で亡くなられました。ギリシャにおける20世紀最大の音楽家と言われ、ギリシャ芸術・文化、政治に多大な影響を与えました。
本日の曲は無伴奏ヴァイオリン曲「主題と変奏」です。少し物悲しい表情の主題がぐいぐいと心に迫ってきます。その後の変奏の部分でも重音奏法はあまり使用されず、一本の旋律で聴かせる音楽になっていますが、単調さは微塵も感じさせません。終曲まで一気呵成にぐいぐいと聴衆をひきつけます。政治的な闘いに巻き込まれ、投獄まで経験した過酷な体験が、本曲にも滲み出ている感じがします。
1947年、ギリシャ内戦の激動の時代、ミキス・テオドラキスは政治活動を理由に逮捕され、イカリア島に流刑となりました。過酷な流刑地で、彼は唯一のヴァイオリン独奏曲を作曲しました。それは、同じく政治犯でヴァイオリニストだったギオルゴス・リクディスに捧げられた、非常に個人的な作品です。数年後、アテネ国立管弦楽団の元コンサートマスターであり、リクディスの弟子でもあった著名なヴァイオリニスト、タツィス・アポストリディスによって、この自筆譜はギリシャ大音楽図書館「リリアン・ヴードリ」のミキス・テオドラキス・アーカイブに保存されました。この作品は2006年にアテネ・コンサートホールで世界初演されました。
ニコス・スカルコッタス、パウル・ヒンデミット、マックス・レーガーといった作曲家たちのヴァイオリン独奏曲の伝統を引き継ぎながら、テオドラキスは紛れもなく彼独自の音楽の道を歩んでいきました。シンプルながらも深い表現力を持つ主題に支えられたこの作品は、脱出への闘い、つまり閉じ込められた迷路の中で光を探し求めるような、幾重にも重なる変奏によって展開していきます。迷路を辿るように逆戻りする変奏もあれば、行き詰まりに陥る変奏もあります。終楽章は、囚われながらも屈することなく、激しく抵抗する魂の印象を強く残します。
構成:
主題:アンダンテ・エスプレッシーヴォ
I. アレグロ・モデラート
II. アレグロ・モデラート
III. アレグロ
IV. アンダンテ
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
テオドラキス、ミキス:主題と変奏