一日一曲(220)ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」

 本日はベルクのヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」です。

 本曲はベルクさんの最後の作品(正確には、完成作品として最後の作品。そのほか、未完の歌劇「ルル」が残されました)となりました。
ベルクさんは12音音楽の創始者シェーンベルクさんのお弟子さんで、ベルクさんも12音で作曲しています。ただし、12音音楽でありながら、調性も感じさせるような音列を用いていまして、調性音楽と無調音楽の折衷案的な感じもある音楽です。
 ヴァイオリン協奏曲でもそのような音列が使われていまして、それがピタッとツボにはまっている感じです。計算されつくして完璧に仕上げられている、といえるでしょう。例えば、曲の出だしは独創ヴァイオリンの開放弦の4音(ソレラミ)で始まりますが、それは音列の1、3、5、7番目の音にあたります。すぐ続いて独創ヴァイオリンが音列の2、4、6、8番目(♭シ♯ファド♯ソ)、さらに3、5、7、9番目(レラミシ)と演奏していきます。静かで神秘的な響きでぐっと引き込まれていきます。この辺りの詳しい解説は、ウィキペディアにもありますので、ご興味のある方はそちらも見てみてください。

ベルク作曲ヴァイオリン協奏曲の解説(Wikipedia)

 本曲は、ベルクさんが可愛がっていたマノン・グロピウスという娘さん(アルマ・マーラーさんの子供)が18歳で夭折されたことがきっかけで、作曲されました。
 第1楽章は生前のマノンさんのイメージ、第2楽章はマノンさんの闘病生活と昇天を表現しています。
 曲の最後、独創ヴァイオリンが高音を持続させる中、オーケストラが和声を変化させていくのですが、この部分を聴くといつも背筋がゾクッとします。昇天して天国に向かう音楽的な表現の最も秀逸な部分ではないかと感じています。

 なお、第2楽章の途中で引用されるバッハのコラールは、こちらです。カンタータ第60番の第5曲のコラール「我満ちたれり」です。本日の演奏では第2楽章の7分35秒あたりからの部分です。
 
バッハ:コラール「我満ちたれり」

 本日の演奏者は、世界的ヴァイオリニストのギドン・クレーメルさんです。数ある本曲の録音の中でも最高峰の演奏の一つと思います。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より
https://ml.naxos.jp/work/4492994

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