一日一曲(258)ショスタコーヴィチ:オラトリオ「森の歌」
本日はショスタコーヴィチさんのオラトリオ「森の歌」をどうぞ。
政治に翻弄された生涯を送ったショスタコーヴィチさんですが、「当局」とうまくやるために作った作品の一つがこの曲。
本曲は大成功をおさめ、1950年にはスターリン賞第一席を受賞。見事名誉は回復されました。ただし、作曲者自身は相当複雑だったようで、初演時にはショスタコーヴィチさんはホテルの一室でむせび泣き、ウオトカを痛飲したという逸話が残されています。
当初はスターリンを礼賛する内容の歌詞もあり、かなり「あからさま」でした。そんな訳で、スターリンの死後は歌詞の改訂が行われたりもしたそうです。その後ソ連の崩壊などもあり、演奏される機会も皆無に近くなってしまいました。そんな風潮に対して、日本人指揮者の岩城宏之さん(故人)は、『この曲は再三演奏されてしかるべき曲なのではないか。こんなに分かりやすくて、良くて、しかも転調とかすべてが高級で、実にうまく書いている。厳然として傑作だと改めて感心してしまう』と音楽的価値の高さを評価されていらっしゃいます。岩城さんは、大学生時代にこの曲を選んで演奏会を開催した経験があり、そのお話は「森のうた」という本にまとめられています。昔読んだことがありますが、なかなか感動的なお話でしたよ!
本曲は以下の7曲で構成されています。
1曲目「戦争が終わって」
2曲目「祖国を緑にかえよう」
3曲目「過去の追憶」
4曲目「ピオネールたちは木を植えている」
5曲目「スターリングラード市民は前進する」
6曲目「未来への逍遙」
7曲目「讃歌」
最終局の4分の7拍子のフーガのテーマが印象的です。昔、音楽の教科書か何かにこのテーマの楽譜が載っていて、それが変拍子のメロディに初めて出会った時でしたので、強烈に印象に残っていました。ずっと「どんな曲なんだろう?」と思っていたのですが、ようやく聴くことが出来ました。う~ん、実に分かりやすい!
本曲は植林活動をテーマにされていますので、現在では環境保全の面から再評価されたり、演奏される機会が増えてもよいのかもしれません。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より
https://ml.naxos.jp/work/4546689