一日一曲(637)クレツキ、パウル:3つのピアノ小品
本日は、没後50年(1973年3月21日没)を迎えらえたポーランドの作曲家兼指揮者、パウル・クレツキさんの曲をご紹介します。
クレツキさんは1900年、ポーランド中央部の都市ウッジに生まれました。幼少期からヴァイオリンをはじめ、15歳で地元のオーケストラに加わるなど、早くから活躍されました。1921年頃から作曲を始めますが、戦争が彼の人生に暗く影を落とし始めます。名指揮者フルトヴェングラーに見いだされ「息子のように」扱われます。彼の後押しのおかげで、若くしてベルリンフィルの指揮者となりましたが、ナチス政権から逃れるためにイタリアに、次はファシスト政権から逃れるためにソ連に、さらに1936年にスターリンの大粛清から逃れるためにスイスに、と彷徨うことを余儀なくされます。続けていた作曲活動は、1942年から休止。そして作曲活動は再開されることはありませんでした。本人は、「ナチスによって精神を破壊され、作曲の意志を損なわれた」と語っています。両親や姉妹を含む肉親をホロコーストによって殺害されています。約20年間に残した作品は30数曲。第二次世界大戦後は指揮者として活躍しましたが、クレツキさんは自分の音楽を宣伝したり指揮したりすることをほとんどしなくなりました。
本日の曲「3つのピアノ小品」は1940年または1941年に作曲された曲で、最後の作品にかなり近い作品です。美しいメロディの中にそっと忍ばされているような哀しみが、クレツキさんの苦悩を映し出しているようにも思えます。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
クレツキ、パウル:3つのピアノ小品