一日一曲(1155)湯浅譲二:芭蕉の俳句による四季
本日は先月亡くなられた(2024年7月21日没)日本の作曲家、湯浅譲二さんを追悼して、曲をご紹介いたします。
湯浅譲二さんは1929年に福島県郡山市で生まれました。開業医で芸術愛好家だった父の影響で幼時より音楽に親しみました。慶應義塾大学医学部に進学し、当初は外科医志望で作曲は趣味として行うつもりだったのですが、東京で日本の現代音楽の状況を知るうちに「このぐらいなら自分でもできる」と思うようになり、方向転換。1951年、「10年間は面倒みてやるから」との父親の合意のもとに医学部教養課程を中退して作曲の道に進むことになりました。詩人・瀧口修造を中心に集まった芸術家グループ・実験工房に加わり、武満徹らと共に活動し電子音楽や自作を含む現代音楽の演奏会の製作にかかわりました。カリフォルニア大学サンディエゴ校教授、日本大学藝術学部客員教授、東京音楽大学客員教授、桐朋学園大学特任教授など要職を歴任されています。2024年7月21日に肺炎により94歳で逝去されました。
本日の曲は、合唱曲「芭蕉の俳句による四季」です。この曲は、2002年9月に湯浅さんがチヴィテッラ・ラニエリ財団の招待でウンブリアの古城チヴィテッラ・ラニエリに滞在していたときに、YL男声合唱団(本日の演奏団体です)の委嘱を受けて作曲されました。芭蕉の有名な4つの俳句を四季(春夏秋冬)にあてはめた、4楽章形式です。各楽章ごとに日本語の俳句の原句とその英訳を組み合わせて歌われています。湯浅さんはこう語られています。『この4つの楽章を通して、2つの特徴的な表現を統合しようと試みました。1つは英語の詩から派生したやや抽象的な音楽表現、もう1つは日本語の原句が多かれ少なかれ日本的な音楽的特徴を喚起する表現です。』
4つの俳句と英訳とを掲載しておきます。
I 春
古池や蛙飛び込む水の音
An old pond
a frog leaps in,
the sound of water
II 夏
夏草や兵どもが夢の跡
The summer grass,
holds still the dreams
of stalwart warriors
III 秋
菊の香やならには古き仏達
Chrysanthemum scent
in Nara ancient statues
of the Buddha
IV 冬
こがらしや頬腫痛む人の顔
Withering wind,
the face of one
suffering from swollen cheeks
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
湯浅譲二:芭蕉の俳句による四季