一日一曲(1202)ホルスト、グスターヴ:惑星

 本日は、生誕150年(1874年9月21日生)を迎えらえたイギリスの作曲家、グスターヴ・ホルストさん特集の3回目です。

 ホルストさんの代表作は管弦楽組曲「惑星」です。この曲は第1次世界大戦の直前の1912年頃から1914年頃を中心として作曲され、第1次世界大戦終戦直前の1918年9月29日に初演が行われました。急遽決まった初演だったそうで、楽団員たちが初めて楽譜を目にしたのは演奏会が始まるわずか2時間前だったといわれています。
 ホルストさんんは占星術に興味があったらしく、それが本曲作曲の動機となっているようです。本曲は以下の7曲から構成されています。

 第1曲「火星、戦争をもたらす者」
 第2曲「金星、平和をもたらす者」
 第3曲「水星、翼のある使者」
 第4曲「木星、快楽をもたらす者」
 第5曲「土星、老いをもたらす者」
 第6曲「天王星、魔術師」
 第7曲「海王星、神秘主義者」

 作曲当時は発見されていなかった冥王星が1930年に発見されたのち、ホルストさんは冥王星を本曲に追加しようとしたのですが、果たせぬまま1934年に亡くなられました。
 ホルストさんは本曲をご自身ではあまり評価されていらっしゃらなかったようです。、自身の他の作品がことごとくその影に隠れてしまうことに不満を洩らし、「芸術家は世の中でうまくいかないことを祈るべきである」という言葉すら遺していらっしゃるそうです。ただ、自身でも何度かこの作品を指揮し、録音も残していらっしゃいますので、それなりに愛着はあったのでしょう。
 ホルストさんは、本曲に関して、例えば「楽器編成の厳守」、「演奏順の厳守」、「抜粋演奏の禁止」など、非常に厳格な制約を設けていらしたそうです。演奏順に関しては、特に「ハッピーエンド」にするために「木星」で終わらせるのを嫌がっていた、とのことです。ホルストさんはそれに関して「現実の世界では、終わりは決して幸せなものではないからです」と語っていらっしゃいます。その願いは現在では必ずしも厳守されているわけではなく、「木星」については、いろいろと編曲され独立して演奏されることも多い状況になっています。人気曲の宿命?なのかもしれません。

 本曲は次第に人気を獲得し、ホルストさんは一躍時代の寵児に躍り出ました。ですが、ホルストさんにとっては有名なることは全く気質にそぐわないことでした。
栄典や褒賞の申し出を辞退し、インタビューを受けることやサインに応じることをしなかった、とのことです。
 ただ、ホルストさんの死後、ホルストさんと本曲は急速に忘れ去られていきました。本曲が同時代の作曲家の意欲的な作品(たとえばドビュッシーの『海』やストラヴィンスキーの『春の祭典』など)と比較してやや低水準と見なされてしまった、ということが原因のようです。長い忘却期間が過ぎた後、1961年頃にヘルベルト・フォン・カラヤンがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会で紹介したことがきっかけで再評価が進み、急速に復権し、作曲直後を上回る大人気曲になりました。

 本日は初演の指揮者であるボールトさんの録音でどうぞ。ボールトさんにとっては本曲は「名刺代わり」の曲であったようです。5回にわたって録音されていらっしゃいます。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ホルスト、グスターヴ:惑星

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