一日一曲(1496)芥川也寸志:エローラ交響曲
本日は、生誕100年(1925年7月12日生)を迎えらえた日本の作曲家、芥川也寸志さん特集の3回目です。
1957年、ヨーロッパ旅行の帰途、インドに立ち寄った芥川さんは、エローラ石窟院のカイラーサナータ寺院で、巨大な岩を刳り貫いて造られた魔術的空間に衝撃を受け、このときの感動から『エローラ交響曲』を作曲しました。『エローラ交響曲』は、芥川さんの代表作の一つとなりました。この頃から、動的な作風の代わりに静謐な作風を模索するようになりました。芥川さんはそれらに関して「マイナスの作曲論」を唱えられました。
西洋的な建築が何もない空間に材料を積み上げて作る加算的・塑像的な「プラスの空間」であるとすれば、エローラ石窟群は元から存在する巨大な岩盤を上から掘り下げて作った消去的・彫刻的な「マイナスの空間」であるととらえ、これを音楽創作へ応用。静寂の・提唱しました。
1958年6月16日、京都五条の旅館にて松竹映画『欲』のための音楽を作曲中、芥川の部屋に京都大学医学部助教授夫人(35歳)が乱入し、服毒自殺を遂げるという事件が発生しました。この女性は芥川に熱烈な思慕を寄せ、一方的に恋文攻勢や待ち伏せ(現在でいうストーカー行為)を繰り返していたが、恐れをなした芥川さんはきっぱり撥ねつけました。それに絶望して女性が覚悟の死を選んだ、という事件でした。1967年12月、芥川さんを中心にアマチュア合唱団「鯨」が創立され、熱心に指導を行いました。
本日の曲は、『エローラ交響曲』です。個人的には、初期の作風の方が好みでして、ちょっと本曲はもう少し聴き込まないと、魅力を見つけることができないかな、と感じています。それはそれとして、代表作と位置付けられている本曲は、やはり無視できるものではないでしょう。「マイナスの作曲論」に基づいた本曲、ご堪能ください。
ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
芥川也寸志:エローラ交響曲