一日一曲(1559)サマーズ、ハリー:ピカソ組曲
本日は、生誕100年(1925年9月11日生)を迎えらえたカナダの作曲家、ハリー・サマーズさんの曲をご紹介します。
サマーズさんはオンタリオ州トロントで生まれました。1939年になるまで正式な音楽教育は受けて居ませんでしたが、ピアニストでもあった医師夫妻との出会いが、サマーズさんを音楽の道に進むきっかけとなりました。近所のピアノ教師指導の下で初めてピアノの勉強を開始し、トロント音楽院に進学しました。途中カナダ空軍での勤務を挟み、1948年に同音楽院を卒業、翌年からは作曲に集中することとなりました。カナダ作曲家連盟(CLC)の創設メンバーとして活躍したほか、カナダ芸術評議会やカナダ音楽センターなど、他のカナダの音楽団体の設立にも関与しました。「カナダ作曲界の最愛の人」という非公式の称号を獲得されていらっしゃいます。1999年3月、73歳でオンタリオ州トロントで亡くなられました。
本日の曲は管弦楽曲「ピカソ組曲」です。1964年、作曲者39歳の時の作品です。サスカトゥーン交響楽団(Saskatoon Symphony Orchestra)の委嘱を受けて作曲されました。全体で9つの曲からなり、ピカソの画家としての各時期—初期パリ時代、ブルー・ピリオド(青の時代)、ローズ・ピリオドおよびサーカス的モチーフ、キュビスム、ネオクラシック様式、大量の銅版画作品「ヴォラール組曲(Vollard Suite)」、壁画的作品の「Temple of Peace」、アルカディア風の牧歌的期間、「Codetta」による結び—を音楽で追体験させる構成となっています。各曲の詳細は以下の通り。
第1曲:パリ1900年頃(Paris circa 1900)
テーマ: ピカソが初めてパリに到着した時期の若き日の情熱と孤独。
音楽的特徴: 初期の印象派的な和声と抒情的な旋律が特徴で、若者の夢と苦悩を表現しています。
第2曲:青の時代(Blue Period)
テーマ: 貧困と孤独をテーマにした作品群(例: 『老いたギタリスト』)。
音楽的特徴: 深い青色を感じさせるような、哀愁漂うメロディと静謐な和声が特徴です。
第3曲:サーカス(Circus)
テーマ: ピカソのローズ・ピリオドとアフリカ芸術の影響を受けた作品群。
音楽的特徴: 明るく色彩豊かな音色とリズミカルな動きが特徴で、サーカスの華やかさを表現しています。
第4曲:キュビスム(Cubism)
テーマ: 物体を多角的に捉えたキュビスムの作品群(例: 『ヴァイオリン』)。
音楽的特徴: 分割されたリズムと断片的なメロディが特徴で、視覚芸術の断片化を音楽で再現しています。
第5曲:新古典主義(Neo-classic)
テーマ: 戦後の秩序回復と古典への回帰。
音楽的特徴: 古典的な形式と調和を取り入れつつ、現代的な感覚を融合させたスタイルです。
第6曲:ヴォラール版画集(The Vollard Suite)
テーマ: アンブロワーズ・ヴォラールの注文による版画作品群。
音楽的特徴: 緻密で詳細な描写を音楽で表現し、版画の精緻さを再現しています。
第7曲:壁画:平和の神殿(Mural: Temple of Peace)
テーマ: 戦争と平和をテーマにした壁画『戦争と平和』。
音楽的特徴: 劇的な対比と力強い響きで、戦争の悲惨さと平和の希望を描いています。
第8曲:アルカディア:フルートを持つファウヌス – 無邪気(Arcadia: Faun with Flute – Innocence)
テーマ: ピカソの若き日の牧歌的な作品群。
音楽的特徴: 柔らかなフルートの音色と夢幻的な和声が特徴で、無邪気な世界を表現しています。
第9曲:コデッタ(Codetta)
テーマ: ピカソの言葉「若さになるには時間がかかる」を引用。
音楽的特徴: 初楽章のテーマが再現され、全体を締めくくる役割を果たしています。
サマーズさんの作品の中でも比較的親しみやすく、視覚芸術と音楽を結びつけたプログラム音楽として、カナダ国内外で人気がある曲です。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
サマーズ、ハリー:ピカソ組曲