一日一曲(1696)ベンディクス、ヴィクトー:ピアノソナタ ト短調

 本日は、没後100年(1926年1月1日没)を迎えらえたデンマークの作曲家、ヴィクトー・ベンディクスさんの曲をご紹介します。

 ベンディクスさんは、1851年1月4日にデンマークの首都コペンハーゲンでユダヤ系商人の家庭に生まれました。幼少より音楽的才能を示し、当時の音楽界の重鎮ニルス・W・ガーデに見出され、1867年創設の音楽院で最初の門弟となりました。ベンディクスさん後に彼の助手も務めていらっしゃいます。1870年代にはドイツへ渡り、バイロイトでワーグナーの活動に触れ、ワイマールではフランツ・リストと交流しました。これらの経験は、ベンディクスさんの音楽に国際的視野と高度なヴィルトゥオジティをもたらしました。ベンディクスさんは4つの交響曲、ピアノ協奏曲、室内楽、歌曲など100曲以上を作曲しましたが、自己批判的な性格から作品番号を与えたのは33作に限られています。1891年、ガーデの後継指揮者に選ばれなかったことは大きな挫折となりましたが、その後に作曲された《ピアノソナタ ト短調 Op.26》(1896)は、彼の芸術的頂点を示す大作です。1926年1月1日にコペンハーゲンで76歳の誕生日を目前に亡くなられました。晩年は保守的な過渡期の作曲家と見なされましたが、今日ではデンマーク・ロマン派を代表する重要人物として再評価が進んでいます。

 本日の曲は、上の文章中で登場した「ピアノ・ソナタ ト短調」です。本作は1896年に作曲され、1898年に作曲者自身のピアノによって初演されました。伝統的な4楽章形式で書かれており、演奏時間は約40分に及ぶ大規模な作品です。
 全体は暗く、不安と緊張に満ちた性格を帯びていますが、その背景には作曲当時のベンディクスさんの私生活が深く関わっています。彼は当時、教え子であった若いピアニストと関係を持ち、彼女はベンディクスさんの子を出産しました。その後、彼女の行動は次第に常軌を逸し、執拗に彼の後を追うようになります。最終的には絶望の末、散歩中のベンディクスさんを銃撃するという事件にまで発展しました。幸いにも銃撃は未遂に終わりましたが、この事件は新聞の一面を飾る大スキャンダルとなり、彼の社会的信用と支援を大きく損なう結果となりました。
 こうした私生活の激しい動揺は、内的葛藤と極度の緊張感を生み、それが本作全体に濃厚な劇性として刻み込まれています。「ピアノソナタ ト短調」は、後期ロマン派の情熱と厳格な構築性が高い次元で融合した、ベンディクス芸術の頂点を示す作品といえるでしょう。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ベンディクス、ヴィクトー:ピアノソナタ ト短調

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