一日一曲(1702)ブライアン、ハヴァーガル:交響曲第1番ニ短調「ゴシック」
本日は、生誕150年(1876年1月29日生)を迎えらえたイギリスの作曲家、ハヴァーガル・ブライアンさんの曲をご紹介します。
【ハヴァーガル・ブライアン:巨大な編成と超長大な交響曲を書き続けた、不屈の「イギリスの巨人」】
ハヴァーガル・ブライアンは、1876年1月29日にイギリスのスタッフォードシャー(ドレッスデン)の労働者階級の家庭に生まれました。彼は正規の音楽教育をほとんど受けず、働きながら独学で作曲を習得したという、稀に見る苦労人です。初期にはエルガーなどの巨匠から認められた時期もありましたが、そのこだわり抜いた複雑な作風と、演奏に膨大なコストがかかる巨大すぎる編成が災いし、楽壇からは次第に孤立。「忘れ去られた作曲家」として、長らく困窮と無名の中で過ごしました。
しかし、彼の真骨頂はその驚異的な執念にあります。人生の大部分を事務員や音楽雑誌のライターとして働きながら支え、自宅の片隅で誰に聴かれる当てもない巨大なスコアを書き続けました。転機が訪れたのは、彼が80歳を過ぎてからです。BBCのプロデューサーらが彼の楽譜を発見し、その圧倒的な独創性に驚愕して次々と作品を上演。これを機に創作の火が再燃したブライアンは、なんと80代から90代にかけて20曲以上の交響曲を書き上げました。最終的に彼がこの世に送り出した交響曲は、実に「32曲」。 音楽史上類を見ない「大器晩成」の伝説を作りました。再評価の嵐の中、1972年11月28日、サセックスのショアハム=バイ=シーにて96歳でその天寿を全うしました。
【本日のご紹介曲:交響曲第1番「ゴシック」】
この曲は、ブライアンが1919年から1927年にかけて、心血を注いで完成させた音楽史上最大級のピラミッドです。演奏時間は約2時間。かつて「世界で最も長く、巨大な編成を必要とする交響曲」としてギネス記録にも認定されました。
「ゴシック」という名は、中世の巨大な大聖堂や、そこに込められた人間の知性と情熱へのオマージュです。第1部(オーケストラのみ)と第2部(巨大な合唱付き)に分かれており、そのスケール感はまさに「音で建てられた大聖堂」と言えるでしょう。この圧倒的な『音の大聖堂』の中に身を投じ、20世紀最大の音楽的冒険を体験してみませんか?
<参考:驚異の「ゴシック」データ>
総演奏人数: 約800名〜1,000名(合唱団含む)
金管楽器: 合計40本以上(別働隊を含む)
打楽器: ティンパニ2組に加え、巨大なゴングやサンダーシート(雷の音を出す板)まで登場
楽譜の重さ: 演奏用のフルスコアは、まるで図鑑のような厚みと重さになります。
【聴きどころ】
1)物理的な「音の壁」を体感する
この曲を演奏するには、数百人のオーケストラと、さらに数百人の合唱団が必要です。全編クライマックスのような迫力があり、特に全楽器が鳴り響く場面では、ヘッドホンやスピーカーが震えるほどの「音の圧力」を物理的に感じることができます。
2)人間の声が織りなす「宇宙的な響き」
後半の「ティ・デウム」では、複数の合唱団が複雑に絡み合います。それは単なる歌声を超えて、まるで宇宙の鳴動か、あるいは天界の響きのように聞こえてくるはずです。人の声がこれほどまでに力強く、恐ろしく、そして美しいものかと思い知らされます。
3)映画音楽のようなドラマチックな展開
ブライアンの音楽は、独学ゆえに既存の型にはまりません。突然現れる美しい旋律や、不安を煽るような打楽器の連打など、まるで最新の映画音楽を聴いているようなドラマチックな変化が次々と訪れるため、長大ながらも聴き手を飽きさせません。
1,000人近い演奏者が一つの音楽を作り上げる奇跡!ブライアンが90代まで持ち続けた情熱の結晶を、ぜひその耳で確かめてみてください。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ブライアン、ハヴァーガル:交響曲第1番ニ短調「ゴシック」
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