一日一曲(1704)ヴィレット、ピエール:聖母への賛歌
本日は、生誕100年( 1926年2月7日生)を迎えらえたフランスの作曲家、ピエール・ヴィレットさんの曲をご紹介します。
【ピエール・ヴィレット:静謐な祈りを洗練された和声で紡いだ「合唱の色彩家」】
ピエール・ヴィレットは、1926年2月7日にフランスのサン=マメスで生まれ、伝統的なカトリック音楽と近代フランス音楽の語法を融合させた珠玉の作品を遺しました。パリ国立高等音楽院でモーリス・デュリュフレらに師事し、1949年にはローマ賞第2位を受賞。若くしてその比類なき才能を証明しました。
彼の生涯は、作曲活動と並行して音楽教育の振興に捧げられたのが特徴です。サント=マールの音楽院院長を経て、1957年にはブザンソン音楽院の院長に就任しました。しかし、20代で肺の摘出手術を受けるなど、もともと病弱だった彼は、山岳地帯の厳しい気候に適応することが難しくなります。そのため、療養を兼ねて温暖な南仏への移住を決意し、1967年にエクス=アン=プロヴァンス音楽院の院長に就任。1987年に引退するまで、この地で教育と創作に情熱を注ぎました。
多忙な職務と病との闘いの傍らで生み出された楽曲は、数は決して多くはないものの、どれもが磨き抜かれた宝石のような輝きを放っています。グレゴリオ聖歌の精神性に、フォーレの優雅さやジャズのモダンな和声が調和した独自の響きは、今や世界の合唱レパートリーに欠かせないものとなっています。彼は1998年3月6日、愛したエクス=アン=プロヴァンスにて72歳でその生涯を閉じましたが、その音楽は今も聴く者の心に深い安らぎと光を与え続けています。
【本日のご紹介曲:聖母への賛歌(Hymne à la Vierge)Op. 24】
1954年に書き上げられたこの曲は、彼の全作品の中で最も愛されている合唱の至宝です。15世紀の作者不詳の詩に基づいた無伴奏混声合唱曲で、恩師デュリュフレ譲りの「神秘性」と「色彩感」が色濃く反映されています。
【聴きどころ】
1)「光」を感じさせるジャジーな和声
曲の冒頭から現れる、霧が晴れて光が差し込むような浮遊感のある響きに注目してください。伝統的な宗教曲の枠を超え、ジャズのテンション・コードを思わせる洗練された和声が、聖母への崇敬の念を「モダンな祈り」へと昇華させています。
2)緻密なディヴィジ(分割)が生む音の層
声部が重なり合う様は、まさにステンドグラスを透過する光の交差。終盤に向けて響きが厚みを増していく瞬間は圧巻です。
3)静寂に溶ける「アーメン」
消え入るような最後の一節は、天上の平安そのもの。深い余韻とともに心が浄化されるはずです。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ヴィレット、ピエール:聖母への賛歌
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