一日一曲(1706)バセット、レスリー:独り言

 本日は、没後10年(2016年2月4日没)を迎えらえたアメリカの作曲家、レスリー・バセットさんの曲をご紹介します。

【レスリー・バセット:伝統的な音楽語法と現代的な響きを融合させ、緻密な構成の中に人間味あふれる詩情を宿したアメリカの巨匠】
 レスリー・バセットは1923年1月22日にアメリカ合衆国カリフォルニア州ハンフォードで生まれました。幼少期からピアノやチェロ、トロンボーンなど多彩な楽器に親しみ、音楽の基礎を築きました。彼のキャリアにおいて大きな転機となったのは、第二次世界大戦中の軍楽隊での経験です。トロンボーン奏者や編曲家として活動したこの時期、彼は実用的なアンサンブルの響きを身体に刻み込みました。
 戦後、ミシガン大学で本格的に作曲を学びます。その後、フルブライト奨学生としてフランスへ渡り、20世紀を代表する教育者ナディア・ブーランジェや作曲家アルテュール・オネゲルに師事しました。このパリ留学が、彼の作品に見られる「洗練された構成」と「色彩豊かな音響」のルーツとなります。さらに、マリオ・ダヴィドフスキーから電子音楽の影響を、ロベルト・ジェラールから十二音技法などの前衛的な手法を学び、自身のスタイルを確立していきました。
 1966年、代表作『管弦楽のための変奏曲』でピューリッツァー賞を受賞し、現代音楽界における地位を不動のものにします。教育者としても極めて献身的で、長年にわたりミシガン大学で教鞭を執り、後進の育成に尽力しました。彼の音楽は、最先端の技法を使いながらも、常に「聴き手とのコミュニケーション」を忘れない温かさと、楽器の美しさを最大限に引き出す職人芸が共存しています。2016年2月4日に、ジョージア州オークウッドにて93歳でその生涯を閉じました。アメリカ音楽の誠実な守り手として、また革新者として輝き続けた生涯でした。

【本日のご紹介曲:独り言】
 1976年、作曲者53歳の時に書き上げられたこの曲は、クラリネット一本だけで演奏されるにもかかわらず、まるで何人もの人が会話しているような、あるいは一人の人間が激しく自問自答しているような、非常にドラマチックな作品です。演奏時間は全体で約7分、4つの楽章で構成されています。
 第1楽章 Fast, aggressive, driving(速く、攻撃的に、突き進むように)
 第2楽章 Flowing, singing(流れるように、歌うように)
 第3楽章 Fast, abrasive, fiery(速く、荒々しく(刺激的に)、情熱的に)
 第4楽章 Slow, lyrical, expressive(ゆったりと、叙情的に、表情豊かに)

【聴きどころ】
1)楽器一本で「会話」を表現している
  曲名の『Soliloquies(独り言)』とは、演劇で役者が舞台上で一人、心の内をしゃべる「独白」のことです。 この曲では、高い音と低い音、速いフレーズとゆったりしたメロディが交互に現れます。まるで、一人の人間が「あーでもない、こーでもない」と頭の中で考えを巡らせたり、感情を爆発させたりしている様子がクラリネット一本で表現されています。
2) 決まった「リズム」がない自由さ
 普通の曲には「タン、タン、タン、タン」という一定の拍子がありますが、この曲にはそれがほとんどありません。 楽譜には「速さは奏者の自由に任せる」といった指示が多く含まれており、その時々の演奏者の呼吸によって形が変わります。「音楽を聴く」というよりは「誰かの語りを聞く」ような感覚で耳を傾けてみると、自然と入り込みやすくなります。
3)クラリネットの「特殊な音」の面白さ
 バセットは、楽器の音色を非常に大切にした作曲家です。 この曲の中では、わざと指をずらして不安定な音を出したり(微分音)、複数の音がいっぺんに鳴っているように聞こえる奏法(重音)が使われることがあります。これらは「楽器の故障」ではなく、「言葉では言い表せない複雑な感情」を音にするための特殊なテクニックです。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
バセット、レスリー:独り言

バセット、レスリー:独り言(MP3ダウンロード)

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