一日一曲(1716)クルターグ、ジェルジ:薔薇

 本日100歳の誕生日(1926年2月19日生)を迎えられた(おめでとうございます!!)ハンガリーの作曲家、ジェルジ・クルターグさんの曲をご紹介します。

【ジェルジ・クルターグ:現代音楽界における「生ける伝説」である「静寂と凝縮の巨匠」】
 ジェルジ・クルターグは、1926年2月19日に現在のルーマニア(当時はハンガリー領)であるルゴジュに生まれました。幼少期より音楽に親しみ、1946年にブダペストのリスト音楽院へ入学。ここで生涯の友となるリゲティや、最愛の妻となるピアニストのマルタと運命的な出会いを果たします。
 彼の転機は1956年のハンガリー動乱後、パリへ留学した際に訪れました。心理学者マリアンヌ・シュタインとの対話を通じて、過剰な装飾を削ぎ落とし、自分自身の「真実の音」を探求する独自のスタイルを確立。帰国後は母校で教鞭を執り、世界的な演奏家たちを指導しました。
 1980年代以降、その音楽の深淵さが国際的に認められ、世界で最も重要な存命作曲家の一人と目されるようになります。2019年にマルタを亡くした喪失感のなかでも創作の手を止めることはありませんでした。特筆すべきは、92歳で自身初のオペラ『終局』を完成させ、世界を驚かせたことです。
 本日、100歳の誕生日を迎えたクルターグは、ブダペストにて、今この瞬間も沈黙と音の境界線を見つめながら、静かに、しかし力強く創作活動を続けています。

【本日のご紹介曲:歌曲『薔薇(Die Rosen)』】
 本曲は、2023年8月18日、作曲者97歳の時にブダペストで作曲されました。現代ドイツの詩人ウルリケ・シュスターによる、わずか2行の詩に基づいています。

【歌詞と日本語訳】
Die Rosen durchwandern die Bäume
薔薇は木々の間をわたり歩き
Und das Unglück durchwuchert die Menschen
不幸は人々のなかに蔓延(はびこ)る

【聴きどころ】
1)40秒に凝縮された「生」の対比
 演奏時間はわずか40秒ほどですが、優雅に自然を彩る「薔薇」と、人間の内面を侵食する「不幸」という強烈な対比が描かれています。極限まで切り詰められた音の中に、人生の光と影が鋭く突きつけられます。
2)執念が生んだ「究極の響き」
 この曲の録音には100歳近いクルターグ本人が立ち会い、理想の響きを求めて驚異的な回数のテイクが重ねられました。一音一音に込められた、作曲家の妥協なき意志の結晶を聴き取ることができます。
3)言葉を「描く」ピアノと歌の融合
 「わたり歩く(durchwandern)」や「蔓延る(durchwuchert)」といった動詞のイメージが、ピアノの音型や歌の旋律と見事に一体化しています。単なる伴奏ではなく、ピアノと歌が一体となって詩の光景を瞬時に描き出す、その職人芸のような緻密さに注目してください。

 本日は作曲者も録音に立ち会った、世界初録音の演奏でお聴きください。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
クルターグ、ジェルジ:薔薇

クルターグ、ジェルジ:薔薇(amazon music)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

新時代の名曲名盤500+100 (ONTOMO MOOK) [ レコード芸術 ]
価格:2,640円(税込、送料無料) (2026/2/14時点)

\ 最新情報をチェック /

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です