一日一曲(1722)アルプ、クラウス:ズィーテンチェロ

 本日は、没後10年(2016年1月4日没)を迎えらえたドイツの作曲家、クラウス・アルプさんの曲をご紹介します。

【クラウス・アルプ:ドイツ音楽の伝統を愛しながら、それを現代の感性で大胆に解体・再構築した知的な探究者】
 クラウス・アルプは、1950年4月2日にドイツのゾーリンゲンで生まれました。北ドイツの牧師の家庭という、日常的に音楽が溢れる環境で育ち、ハンブルク音楽演劇大学でピアノ、指揮、作曲を学びました。学生時代には、ジャズコンボやミニマルミュージックアンサンブルのリーダーも務めました。
 彼のキャリアは多岐にわたり、1987年から1995年まで首席指揮者を務めたカイザースラウテルンSWR放送管弦楽団での活動や、ハンブルク、ヴィースバーデンの歌劇場での指揮でその名を知られました。また、1993年からはマンハイム音楽演劇大学の教授として、20年以上にわたり後進の指揮者を育成。2005年にはラインラント=プファルツ州芸術賞を受賞するなど、ドイツ音楽界の重鎮として活躍しました。
 私生活では、チェリストであるユリアン・アルプ(1981年生)の叔父にあたります。クラウスは甥の才能を幼少期から見守り、音楽的な助言を与えるだけでなく、彼のために複数の作品を書き下ろしました。2016年1月4日にルートヴィヒスハーフェンで急逝するまで、彼は伝統的なクラシックの語法に、自身が愛したジャズや現代的な音響を融合させる独自の作風を追求し続けました。叔父から甥へと受け継がれたその音楽精神は、現在もユリアンの演奏を通じて世界中の聴衆に届けられています。

【本日のご紹介曲:Suitencello(ズィーテンチェロ)】 
 本曲は、1996年にユリアンがドイツの権威ある青少年コンクールで優勝した際、叔父クラウスが祝辞として贈った無伴奏チェロのための作品です。
 タイトルの「Suitencello」は「組曲(Suite)」と「チェロ(Cello)」を組み合わせた造語です。J.S.バッハの有名な「無伴奏チェロ組曲第1番」をモチーフにしていますが、メロディをそのまま引用するのではなく、その「骨組み」や「響き」を一度バラバラに解体し、現代的な視点で作り替えています。まるでバッハの肖像画をピカソが描き直したような、不思議で知的な魅力に満ちた一曲です。
 本日は献呈者である甥のユリアン・アルプによる演奏でお聴きください!ユリアンさんの演奏は、叔父さんの頭の中にあった音を最も正確に、そして最も愛情深く再現していると言えます。

【聴きどころ】
1)「叔父と甥」の親密な対話:
 ユリアンはこの曲を単なる楽譜としてではなく、叔父からの「個人的な手紙」のように演奏しています。長年身近に接してきた彼だからこそ表現できる、叔父のユーモアやこだわりが音の端々に宿っています。
2)バッハの「影」を探す楽しみ:
 冒頭の分散和音など、ふとした瞬間にバッハの第1番組曲の面影が「影」のように現れます。ユリアンは、その影をあえて強調したり、霧の中に隠したりと、絶妙なニュアンスで聴き手を誘います。
3)チェロが「独白(モノローグ)」する瞬間:
 ユリアンが語っているように、この曲はチェロが一人で静かに語りかけているような響きが特徴です。特に、ジャズの影響を感じさせる自由なリズム感の中で、チェロが深く呼吸するような瞬間の美しさは格別です。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
アルプ、クラウス:ズィーテンチェロ

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