一日一曲(1723)ランゲ=ミュラー 、ペーター・エラスムス:ピアノ幻想曲ハ短調

 本日は、没後100年(1926年2月26日没)を迎えらえたデンマークの作曲家、ペーター・エラスムス・ランゲ=ミュラーさんの曲をご紹介します。
 
【ペーター・エラスムス・ランゲ=ミュラー:デンマークの情緒あふれる旋律を生み出し、「北欧のシューベルト」とも称される叙情派作曲家】
 ペーター・エラスムス・ランゲ=ミュラーは1850年12月1日にデンマークのコペンハーゲンの裕福な家庭に生まれました。健康状態が悪かったため、1871年に音楽院に入学して作曲を学ぶまで学校に通うことができませんでした。しかし、政治家だった父親は、息子も同じ道に進むべきだと判断し、コペンハーゲン大学に入学させて政治学を学ばせました。そうして方向転換を強いられたランゲ=ミュラーさんでしたが、政界には向いていなかったため、1874年までに再び方向転換し、作曲家としてのキャリアに進みました。彼はデンマーク音楽界の巨匠ニルス・ゲーゼらに師事しましたが、終生、特定の楽派に縛られない独自の叙情性を追求し続けました。
 彼の音楽を語る上で欠かせないのが、生涯を通じて彼を悩ませた重い持病(慢性的な頭痛)です。この身体的な苦痛が、彼の作品に特有の「はかなさ」や「憂い」、そして世俗から離れたような「静謐さ」を与えたと言われています。彼は大規模な交響曲よりも、詩に寄り添う歌曲や劇音楽でその才能を最大限に発揮しました。特にデンマークの言葉の響きを活かした歌曲は200曲を超え、当時のデンマークの人々の心に深く浸透しました。
 1926年2月26日、故郷コペンハーゲンで75歳の生涯を閉じるまで、彼は北欧の自然や伝説を愛し、その美しさを音に刻み続けました。派手な技巧よりも、聴く人の心にそっと寄り添うような彼の音楽は、北欧ロマン派の隠れた宝石として再び注目を集めています。

【本日のご紹介曲:ピアノ幻想曲ハ短調(Op.66)】
 1900年頃に作曲された、彼のピアノ作品の中で最も規模が大きく、かつ精神的に深い傑作です。ハ短調という「悲劇的で力強い」調性が選ばれている点に、彼の並々ならぬ決意が感じられます。本曲の完成からいくばくもなく、ランゲ=ミュラーは作曲の筆を折ってしまいました。本曲はその意味で、彼の音楽の集大成ともいえる曲であり、ピアノ曲の「隠れた傑作」です。

【聴きどころ】
1)ハ短調がもたらす「宿命的な響き」
 冒頭から感じられる重厚でドラマチックな響きは、彼が抱えていた心身の苦悩を吐露しているかのようです。甘いだけではない、彼の真剣な眼差しを感じるサウンドです。
2)嵐のような情熱と静寂の対比
 激しく波打つようなパッセージと、ふっと訪れる静かで瞑想的な部分のコントラストが鮮やかです。聴き手は、荒れる北海と穏やかな北欧の森を交互に見るような、劇的な体験ができます。
3)円熟期の「悟り」を感じる終盤
 活動後期の作品らしく、単なる悲劇で終わらない、どこか救いを感じさせる気高さがあります。苦しみを超えた先にある、静かな強さを感じさせます。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ランゲ=ミュラー 、ペーター・エラスムス:ピアノ幻想曲ハ短調

ランゲ=ミュラー 、ペーター・エラスムス:ピアノ幻想曲ハ短調(amazon music)

\ 最新情報をチェック /

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です