一日一曲(1725)シフリン、セイモア:チェロソナタ
本日は、生誕100年(1926年2月28日生)を迎えらえたアメリカの作曲家、セイモア・シフリンさんの曲をご紹介します。
【セイモア・シフリン:伝統と現代性を融合させた、思索的で緻密な室内楽の旗手】
セイモア・シフリン(Seymour Shifrin)は、1926年2月28日にアメリカ合衆国ニューヨーク州ブルックリンで生まれました。音楽への情熱は早くから芽生え、6歳の時にはすでに音楽の勉強を始めていました。ニューヨークの名門「音楽芸術高等学校(High School of Music and Art)」在学中に、当時G.シャーマー社に勤務していた作曲家ウィリアム・シューマンに才能を見出され、1942年から1945年にかけて彼から個人的に作曲の指導を受けました。その後、コロンビア大学に進学してオットー・ルーニングに師事し、1947年に学士号(B.A.)、1949年に修士号(M.A.)を取得します。1951年から52年にかけてはフルブライト奨学金を得てパリへ渡り、巨匠ダリウス・ミヨーのもとでさらなる研鑽を積みました。このミヨーとの出会いは、シフリンの作風、特にその軽妙な「スケルツァンド・スタイル」に大きな影響を与えたと言われています。帰国後は教育者としても華々しく活動し、コロンビア大学やニューヨーク市立大学(CUNY)での短い講師期間を経て、1952年から1966年までカリフォルニア大学バークレー校で教鞭を執りました。1966年からはブランダイス大学の教授に就任し、亡くなるまでその職を務めています。彼の教え子には、デイヴィッド・デル・トレディチやテリー・ライリー、ラ・モンテ・ヤングといった、後の現代音楽界を担う重要な作曲家たちが名を連ねています。
作曲家としては、グッゲンハイム・フェローシップ(1956年、1960年)やナウムブルク賞など数多くの栄誉に輝きました。1970年には、トーマス・ハーディの詩に基づいた代表作『Satires of Circumstance』でクーセヴィツキー国際録音賞を受賞し、タイム誌からは「彼の世代で最も重要な作曲家の一人」と称賛されました。50作品に及ぶ緻密なカタログを残しましたが、1979年9月26日、マサチューセッツ州ネイティックにて53歳の若さで惜しまれつつこの世を去りました。
【本日のご紹介曲:チェロソナタ】
本曲は、シフリンがわずか21歳の時に着手した、彼にとって最初の重要な作品です。作曲にあたり、彼はベートーヴェンのチェロとピアノのための全作品を徹底的に研究し、その形式美を自らの語法に取り入れようとしました。全3楽章で構成され、若き日のほとばしる情熱と、古典への深い探求心が同居した意欲作です。
【聴きどころ】
1)「変身」を繰り返すメロディの面白さ
曲全体を通して、冒頭にチェロが奏でる短いモチーフ(動機)が、形や速さを変えながら何度も登場します。一つの細胞が様々に姿を変えて曲を形作っていく「主題変容」の技法は、まるで音楽の万華鏡のようです。
2)躍動感と静寂の鮮やかなコントラスト
第1楽章と第3楽章は、リズムが強調された外向的でダンスのような力強さを持っています。それに対し、第2楽章は非常に個人的で内省的です。この「動」と「静」の激しい対比が、聴き手に深い印象を残します。
3)チェロが語る「心の歌」
特に第2楽章(Largo)は、彼自身の極めて個人的な独白のようです。強烈な旋律の美しさと、暗いベールを纏ったような装飾音が絡み合い、チェロという楽器が持つ表現力の深さを存分に味わうことができます。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
シフリン、セイモア:チェロソナタ
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