一日一曲(1726)ニールセン、ルドルフ:バベルの塔
本日は、生誕150年(1876年2月29日生)を迎えらえたデンマークの作曲家、ルドルフ・ニールセンさんの曲をご紹介します。
【ルドルフ・ニールセン:デンマークの自然と精神性を美しく描き出した、後期ロマン派の隠れた名匠】
ルドルフ・ニールセンは1876年1月29日、デンマークのシェラン島にあるノール・トヴェデの農家に生まれました。音楽家の家系ではありませんでしたが、幼少期から地元の音楽師にバイオリンを学び、8歳からはプロの教師の下で研鑽を積むなど、早くから音楽への才能を示していました。16歳でコペンハーゲンへ移り、1895年に音楽アカデミーの奨学金を得てバイオリンや音楽理論を学びました。作曲に関してはほぼ独学でしたが、1902年に交響詩『レグナー・ロドブローク』で大きな成功を収めます。この成功で得た奨学金により、1903年から04年にかけてドイツのライプツィヒへ留学しました。現地では国際的な音楽の潮流を吸収し、名門ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から弦楽四重奏曲を出版するなど、国際的なキャリアへの一歩を踏み出しました。帰国後は結婚してヘレルプに居を構え、チボリ管弦楽団の指揮者やフリーランスの作曲家として精力的に活動しました。しかし、1914年の第一次世界大戦の勃発は、内向的で穏やかな性格だった彼に深い精神的ショックを与え、数年間にわたり筆を折るほどの深刻な創作危機をもたらしました。戦後は初期の神秘主義的な作風から、より近代的で透明感のある「自然主義」的なスタイルへと転換します。1926年からはデンマーク放送協会の職員として、放送オーケストラのレパートリー選定やラジオドラマの音楽制作に携わり、晩年までデンマークの音楽文化を支え続けました。ただ、ラジオに携わった頃から作曲はほとんどしなくなられたとのことです。1939年12月6日、コペンハーゲンにて63歳でその生涯を閉じ、約200曲の作品を残しました。
【本日のご紹介曲:バベルの塔Op.35】
1912年から1914年にかけて作曲された本作は、ニールセンの最も野心的であり、彼の人生観を端的に表した記念碑的な大作です。独唱、合唱、管弦楽に加え、神の声を象徴する別働の男声合唱と金管楽器を配するという、デンマーク音楽史上でも珍しいオラトリオ形式の交響詩です。
旧約聖書の「バベルの塔」の物語を基に、人類が精神の力によって救済されるというビジョンを描いています。第一次世界大戦の開戦直前に書き上げられたこの作品は、当時のデンマークの進歩的な精神性を象徴しています。
【聴きどころ】
1)「神の声」の立体的な響き
通常のオーケストラとは別に、舞台から離れた場所に男声合唱と金管アンサンブルが配置されます。これによって「天から降り注ぐ神の声」が立体的な響きとなって耳に届き、まるで映画のワンシーンのような臨場感を味わえます。
2)古代を彷彿とさせる力強いリズムと旋律
第一部では、塔を築き上げる人々の野心が、教会旋律や単純で力強いリズム、そして重厚な和音によって表現されています。レンガが一つずつ積み上がっていくような、原始的でエネルギーに満ちた迫力を感じることができます。
3)劇的なクライマックスと救済の結末
塔が崩壊する直前のクライマックスでは、半音階の12音すべてを重複なく配置した「音列」が提示されます。これは後の12音技法を先取りするような極めて急進的な手法です。彼にとってこの無調的アプローチは、単なる技法の提示ではなく、「調性の崩壊」をもって「バベルの塔の崩壊」を象徴させるという、音楽構造と物語を一致させた劇的な演出となっています。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ニールセン、ルドルフ:バベルの塔
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