一日一曲(1729)リンドリー、ロバート:2つのチェロのためのソロ ハ長調

 本日は、生誕250年(1776年3月4日生)を迎えらえたイギリスのチェリスト兼作曲家、ロバート・リンドリーさんの曲をご紹介します。

【ロバート・リンドリー:半世紀にわたりロンドンの楽壇に君臨し、比類なき技巧と温かな音色でチェロの黄金時代を築き上げた「チェロの王者」】
 ロバート・リンドリー(Robert Lindley)は、1776年3月4日、イギリスのヨークシャー州ローザラムに誕生しました。音楽家であった父からバイオリンとチェロの手ほどきを受け、幼少期から非凡な才能を見せた彼は、16歳の時に当時イギリスを訪れていた高名なチェリスト、ジェームズ・セルヴェットに師事するためロンドンへと向かいました。
 1794年、わずか18歳という異例の若さでロンドンの王立劇場の首席チェロ奏者に抜擢されます。以来、1851年に引退するまでの57年間にわたり、彼はイギリス国内のあらゆる主要な演奏会や音楽祭に欠かせないスター奏者として活躍しました。特にコントラバス奏者のドメニコ・ドラゴネッティとは約50年間もデュオを組み、その一分の隙もないアンサンブルは当時の音楽界で伝説として語り継がれました。二人の演奏があまりに完璧に一致していたため、当時の聴衆は「二人の音が一つの巨大な楽器から発せられているようだ」と驚嘆したといいます。
 リンドリーは非常に謙虚で温厚な人柄として知られていましたが、ひとたび楽器を手にすると圧倒的な気品とカリスマ性を放ちました。教育者としても大きな足跡を残しており、1822年の王立音楽アカデミー(RAM)創立時には初代チェロ教授に就任し、後進の育成に心血を注ぎました。彼の演奏は、力強くも優雅なボウリング(弓使い)と、極めて正確な音程が特徴であり、その技術は当時のヨーロッパ全土でも最高峰と目されていました。
 長年イギリス音楽界の頂点に立ち続けたリンドリーは、引退から4年後の1855年6月13日、ロンドンのベイズウォーターにある自宅で、多くの音楽家たちに惜しまれながらその生涯を閉じました。彼の死は、イギリスにおけるチェロ演奏のひとつの黄金時代の終焉を象徴する出来事として記憶されています。

【本日のご紹介曲:2つのチェロのためのソロ ハ長調 Op. 13】
 この作品は、リンドリーが自身の卓越した演奏技術を披露するため、あるいは優秀な弟子とのアンサンブルのために作曲したものです。正確な作曲年は特定されていませんが、彼が王立音楽アカデミーで教鞭を執り、作曲家としても円熟期にあった1820年代後半から1830年代頃に出版されたものと推測されます。
 あえて「ソナタ」ではなく「ソロ」という名称を用いている点に特徴があり、伴奏側の第2チェロに対しても、主役である第1チェロが際立つような華やかな技巧がふんだんに盛り込まれています。

【聴きどころ】
1)第1チェロによる超絶技巧のパレード
 「ソロ」の名にふさわしく、第1チェロには非常に高い音域の跳躍や素早いパッセージが要求されます。リンドリーが「チェロの王者」と呼ばれた所以たる、華麗なテクニックを存分に堪能できます。
2)チェロ2台が共鳴する豊かな低音の響き
 同楽器2台という編成を活かし、チェロ特有の深く温かい響きが重層的に重なります。ハ長調という明るい響きの中で、低音域の楽器ならではの豊潤なハーモニーを楽しむことができます。
3)劇的な歌心とオペラ風の旋律
 長年王立劇場のオーケストラでオペラ演奏に携わっていたリンドリーらしく、旋律には歌劇のアリアを彷彿とさせるドラマチックな表情があります。技巧一辺倒ではない、優雅で親しみやすいメロディラインが魅力です。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
リンドリー、ロバート:2つのチェロのためのソロ ハ長調

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