一日一曲(1731)シュミット、ウィリアム:ルネサンス組曲
本日は、生誕100年(1926年3月6日)を迎えらえたアメリカの作曲家、ウィリアム・シュミットさんの曲をご紹介します。
【ウィリアム・シュミット:古の響きを現代の息吹で蘇らせ、管楽器レパートリーの地平を切り拓いた「楽譜の伝道師」】
ウィリアム・シュミットは、1926年3月6日にアメリカ合衆国イリノイ州シカゴで生まれました。南カリフォルニア大学で名教師イングルフ・ダールに師事し、作曲の研鑽を積みました。シュミットの功績は作曲だけに留まらず、自身の出版社「ウェスタン・インターナショナル・ミュージック(WIM)」を設立・運営したことにあります。当時、まだ光の当たっていなかった管楽器、特にサクソフォンのための作品を自ら書き、出版し続けることで、世界の音楽シーンに新たなレパートリーを定着させました。
彼の音楽は、ジャズやラグタイムといったアメリカの色彩と、バロックやルネサンスの古典的な形式を巧みに融合させた独自のスタイルを持っています。印象的なエピソードとして、彼は「演奏家が実際にステージで吹きたくなる曲」を書くことに心血を注いでいました。自ら出版社を切り盛りしていたからこそ、常に演奏現場のニーズに寄り添う温かな視点を持っていたのです。
2009年4月25日、コロラド州グリーリーでその生涯を閉じましたが、彼の音楽への情熱と遺志は、現在もWIM社を通じて世界中の奏者に楽譜を届け続け、受け継がれています。今でもなお、彼はアメリカの管楽器音楽を支える精神的な柱として、多くの奏者たちに愛され続けています。
【本日のご紹介曲:ルネサンス組曲(Renaissance Suite)】
1962年に作曲されたこの作品は、サクソフォン四重奏の定番レパートリーです。シュミットは、16世紀ルネサンス期の合唱名曲をサクソフォン4本のために再構築しました。全3楽章で構成されており、第I楽章はG.アイヒンガーの祝祭的なモテットに基づく「Jubilate Deo(神を喜びたたえよ)」、第II楽章は「音楽の聖人」パレストリーナの世俗曲を元にした「La Cruda Mia Nemica(わが残酷な敵)」、そして第III楽章はC.ル・ジューヌの軽快なシャンソンを用いた「Revecy venir du printans(いまや春が戻ってきた)」となっています。
【聴きどころ】
1)3つの個性が織りなす時代絵巻
荘厳な宗教曲(1楽章)、切ない恋の歌(2楽章)、そして弾むような春の訪れ(3楽章)と、各楽章で全く異なるルネサンスの表情を楽しめます。サクソフォンが持つ「歌うような音色」が、古い合唱曲の魅力を鮮やかに引き出しています。
2)サクソフォンならではの「機動力」と「色彩」
原曲は声楽曲ですが、シュミットはサクソフォン特有の素早い音の動きや、鋭いアクセントを巧みに取り入れています。特に第3楽章の、ダンスを踊るような軽快なリズムの受け渡しは、この楽器ならではの爽快感に満ちています。
3)4本の楽器による精密な「対話」
ソプラノからバリトンまで、4本のサクソフォンが対等にメロディを追いかけ合う「ポリフォニー」の面白さが詰まっています。まるで4人の歌手がステージで言葉を交わしているかのような、親密なアンサンブルの妙に注目してください。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
シュミット、ウィリアム:ルネサンス組曲
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