一日一曲(1737)トーマス、ジョン:白い小麦

 本日は、生誕200年(1826年3月1日)を迎えらえたイギリスのハープ奏者兼作曲家、ジョン・トーマスさんの曲をご紹介します。

【ジョン・トーマス:ウェールズの伝統をハープの音色に乗せて世界に広め、英国王室からも厚い信頼を寄せられた「王のハープ奏者」】
 ジョン・トーマス(John Thomas)は、1826年3月1日にイギリスのウェールズ、ブリジェンドで生まれました。音楽家の父からウェールズの伝統楽器「トリプル・ハープ」を学び、11歳で地元の音楽祭「アイスセズボド(Eisteddfod)」で優勝。この時にハープを贈呈されたことが、彼のプロへの道の第一歩となりました。この音楽祭は、現在も続くウェールズ最大の文化祭として知られています。
 その後、ロンドンの王立音楽院で現代的なペダル・ハープと作曲を修めました。1850年代にはヨーロッパ中を演奏旅行し、メンデルスゾーンやベルリオーズといった巨匠たちから「ハープのパガニーニ」と称賛されるほどの超絶技巧を披露します。1871年にはヴィクトリア女王の「王室ハープ奏者」に任命され、ハープの地位向上に大きく貢献しました。彼は生涯を通じて故郷ウェールズの民謡を愛し、それらを芸術的なハープ曲へと昇華させることに情熱を注ぎました。
 晩年までロンドンの王立音楽院などで後進の指導にあたり、近代ハープ音楽の礎を築いた彼は、1913年3月19日、多くの教え子や音楽家に惜しまれながらロンドンにて87歳の生涯を閉じました。

【本日のご紹介曲:白い小麦(Watching the Wheat)】
 本曲は、1850年代にジョン・トーマスが、ウェールズの古い民謡「Bugeilio’r Gwenith Gwyn(白い小麦を見守る)」をテーマに作曲した幻想曲です。
 もともとの歌は、愛する女性との悲恋を嘆く青年の切ない物語ですが、トーマスはこの素朴な旋律を、ハープという楽器の持つ「天上の響き」を最大限に引き出すドラマチックな構成へと作り変えました。まるで小麦の穂が風に揺れ、キラキラと光り輝くような情景が目に浮かぶ、ハープ演奏家にとって欠かせない名曲です。

【聴きどころ】
1)主題が変化していく「変奏」の美しさ
 最初は静かに奏でられる素朴なメロディが、次第に細かな音符の波に包まれ、豪華絢爛な響きへと変化していく様子は圧巻です。
2)ハープ独自の奏法「ハーモニクス」
 曲の途中で聴こえる、鈴の音のようにポーンと高く澄んだ音(ハーモニクス奏法)に注目してください。この独特の音色が幻想的な雰囲気を演出します。
3)グリッサンドによるダイナミックな終奏
 指で弦を滑らせる「グリッサンド」が多用され、最後には一台の楽器とは思えないほどの圧倒的な音の広がりと余韻を楽しむことができます。 

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
トーマス、ジョン:白い小麦

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