一日一曲(1739)モレル、フランソワ:2つの響きの練習曲
本日は、生誕100年(1926年3月14日生)を迎えらえたカナダの作曲家、フランソワ・モレルさんの曲をご紹介します。
【フランソワ・モレル:カナダ現代音楽の黎明期を支え、強靭な構造と極彩色の響きを融合させた「音の彫刻家」】
1926年3月14日、カナダのケベック州モントリオールに生まれたフランソワ・モレル(François Morel)は、幼少期からピアノを学び、音楽への才能を開花させました。18歳の時には新設されたばかりのモントリオール音楽院の門を叩き、ケベック音楽界の巨匠クロード・シャンパーニュに師事します。ここで受けた厳格な音楽教育が、彼の作曲家としての揺るぎない基礎となりました。
1950年代に入ると、モレルはさらなる刺激を求めてニューヨークへ渡ります。そこで現代音楽の風雲児エドガー・ヴァレーズと出会ったことは、彼の人生における最大の転機となりました。ヴァレーズの「音楽は解放された音の集合体である」という思想に深く共鳴し、伝統的なメロディに縛られない、物理的で力強い音響の構築に目覚めます。帰国後の1954年には、カナダ放送協会(CBC)でのキャリアをスタートさせ、放送音楽の作曲や指揮を通じて、カナダ国内に新しい音楽の風を吹き込みました。
1950年代後半から60年代にかけては、セルジュ・ガランらと共に現代音楽の普及団体を設立し、保守的だった当時のカナダ音楽界にモダニズムを根付かせるべく奔走しました。彼の作品は、ドビュッシー譲りの繊細な色彩感と、ヴァレーズ譲りの硬質な構造が共存する独特の世界観を確立していきます。
1970年代後半からは教育者としての比重を高め、1979年から1997年までケベック・シティーのラヴァル大学で教鞭を執りました。彼は学生たちに対し、技術以上に「音そのものに耳を澄ませる真摯な姿勢」を求め、数多くの優れた作曲家を世に送り出しました。その多大な功績により、1994年にケベック州勲章、1996年にはカナダ勲章を受章し、国家的な音楽家としての地位を不動のものにしました。
晩年もその創作意欲は衰えることを知らず、吹奏楽や管弦楽のために、緻密な計算に基づいた色彩豊かなスコアを書き続けました。そして、カナダ音楽界に多大な足跡を残したまま、2018年1月14日、ケベック・シティーにて91歳でその天寿を全うしました。
【本日のご紹介曲:2つの響きの練習曲(2 Études de sonorité)】
モレルが1954年に作曲したこのピアノ曲は、彼が「音の彫刻家」と呼ばれるゆえんが詰まった初期の代表作です。練習曲という形式を借りながらも、そこには新しい時代の響きへの探求心が凝縮されています。
【聴きどころ】
1)宝石を散りばめたような透明な和音
一つひとつの音が濁ることなく、空間にパッと光が差すような鮮やかな響きが特徴です。和音の変化によって、まるで万華鏡のように音楽の色が変わっていく様子に耳を傾けてみてください。
2)「静」と「動」の鮮烈なコントラスト
第1曲の深い霧の中にいるような幻想的な静けさと、第2曲の力強く地面を叩くようなリズム感の対比が鮮やかです。静寂さえも音楽の一部として扱う、モレルの緻密な構成力が光ります。
3)ピアノが放つ多彩な音色の変化
ピアノを単に旋律を弾く楽器としてではなく、鐘の音や金属的な響きなど、様々な質感を持つ「音の素材」として扱っています。指先から生み出される、驚くほど多彩な音の表情が大きな魅力です。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
モレル、フランソワ:2つの響きの練習曲
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