一日一曲(1748)ミンクス、ルードヴィヒ:バレエ『ラ・バヤデール(神殿の舞姫)』

 本日は、生誕200年(1826年3月23日生)を迎えらえたオーストリアの作曲家兼ヴァイオリニスト、ルートヴィヒ・ミンクスさんの曲をご紹介します。

【ルートヴィヒ・ミンクス:ロシア帝国のバレエ黄金時代を築き、躍動するリズムで舞台に命を吹き込んだ不世出のメロディメーカー】
 ルートヴィヒ・ミンクス(出生名:アロイス・ベルンハルト・フィリップ・ミンクス)は、1826年3月23日、ウィーンに生まれました。若くしてヴァイオリンの才能を発揮し、8歳の頃にはウィーンでのリサイタルでデビューを果たしています。1853年頃にロシアへ渡ると、ユスポフ公の私設管弦楽団の首席奏者を務めました。1861年にはモスクワ・ボリショイ劇場のコンサートマスターに就任し、後に指揮者や音楽院の教授も兼任するなど、多才な音楽家として頭角を現します。
 1864年にサンクトペテルブルクで初演された『フィアメッタ』の成功を機に、バレエ作曲家としての地位を確立しました。1871年には、名匠チェーザレ・プーニの後継としてサンクトペテルブルク帝室劇場の専属バレエ作曲家に任命されます。ここで振付師マリウス・プティパと運命的な協力関係を築き、1877年の『ラ・バヤデール』をはじめとする記念碑的な作品を次々と生み出しました。
 ミンクスの音楽は、踊り手にとっての「踊りやすさ」を完璧に捉えたリズムと、聴衆を魅了する優雅でエキゾチックな旋律が最大の特徴です。1886年に専属作曲家のポストを退いた後、1891年に故郷ウィーンへ戻りました。晩年は静かに過ごし、1917年12月7日、同地で91歳の生涯を閉じました。

【本日のご紹介曲:バレエ『ラ・バヤデール(神殿の舞姫)』】
 1877年1月23日、サンクトペテルブルクのマリンスキー劇場で初演された本作は、ミンクスのキャリアにおいて『ドン・キホーテ』と並ぶ最大の成功作となりました。古代インドを舞台にした異国情緒あふれる物語と、振付師マリウス・プティパによる豪華絢爛な演出(グランド・スペクタクル)が当時の聴衆を熱狂させました。ミンクスの音楽は、物語のドラマチックな展開を支えるだけでなく、当時のヨーロッパの人々が抱いていた神秘的な東洋への憧れを、色彩豊かなオーケストレーションで鮮やかに描き出しています。

【聴きどころ】
1)至高の幻想美「影の王国(Schattenakt)」
 愛を誓いながらも裏切られたソロルが、阿片の夢の中で亡霊(影)となったニキヤに再会する幻想的な場面です。32人のダンサーが坂道を降りながら、全く同じ動きを繰り返して舞台を埋め尽くす演出は、クラシック・バレエの美の極致とされています。ミンクスは、同じ旋律を執拗に繰り返すことで、観る者を天上の世界へと誘うような、崇高な音楽を作り上げました。
2)精緻に構成された「バリエーション」
 「影の王国」の中で次々と披露される独舞(バリエーション)は、ミンクスの真骨頂です。資料の譜面指定にもある通り、荘厳な「モデラート」から軽やかな「アレグレット」まで、多彩なリズムが揃っています。これらは単なる伴奏ではなく、ダンサーの細やかなステップや跳躍、そして亡霊たちの神秘的なキャラクターを音で描き出す、計算し尽くされた構成になっています。
3)ドラマを盛り上げるエキゾチックな響き
 古代インドという設定を活かし、ミンクスは当時のヨーロッパの人々が憧れた「東洋的(エキゾチック)」な雰囲気を音楽に巧みに取り入れています。華やかなオーケストレーションとともに、ポロネーズやマズルカといったヨーロッパの伝統的な舞曲形式も織り交ぜることで、物語のドラマチックな展開を豪華絢爛に盛り上げます。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ミンクス、ルードヴィヒ:バレエ『ラ・バヤデール(神殿の舞姫)』

ミンクス、ルードヴィヒ:バレエ『ラ・バヤデール(神殿の舞姫)』(amazon music)

\ 最新情報をチェック /

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です