一日一曲(1750)リードル、ヨーゼフ・アントン:5つの分割によるインベンション
本日は、没後10年(2016年3月25日没)を迎えらえたドイツの作曲家、ヨーゼフ・アントン・リードルさんの曲をご紹介します。
【ヨーゼフ・アントン・リードル:音と光、空間を独自の理論で構築し、既存の音楽概念を解体し続けた孤高の音響建築家】
ヨーゼフ・アントン・リードルは、20世紀後半から現代にかけて、ドイツの前衛芸術シーンにおいて最も急進的かつ独自の道を歩んだ人物の一人です。彼のプロフィールでまず目を引くのは、そのミステリアスな生年です。公式な典拠データ(ドイツ国家図書館など)では1929年6月11日とされていますが、一部の文献等には「1927年」という記載も見られます。この曖昧さは、彼が「既存の枠組み」に当てはめられることを極端に嫌った性質を象徴しているかのようです。
バイエルン州ミュンヘンで生まれたリードルは、1950年頃、20代前半という若さで自らの芸術的指針を固めました。彼はカール・オルフやヘルマン・シェルヘンに師事し、伝統的な音楽語法を学びながらも、既成の「ミュージシャン」という呼称で一括りにされることを拒絶しました。1959年にはミュンヘンに「シーメンス電子音楽スタジオ」を設立し、電子音響の可能性を切り拓く先駆者となります。
彼の創作活動は、楽器の音だけに留まりません。木材が軋む音、降り注ぐ雨の音、ガラスが擦れる音、果ては段ボール箱がガタガタと鳴る音まで、日常に潜むあらゆる「音」を素材として収集し、それを建築的な精度で組み立て直しました。1960年代以降は、映像や照明、さらには「香り」までをも演出に組み込んだマルチメディア作品を次々と発表。視覚、聴覚、さらには嗅覚までもが交差する独自の表現世界「音のコスモス」を構築しました。
晩年もその探求心は衰えず、ミュンヘンを拠点に、バイエルン放送の現代音楽シリーズ『musica viva』の企画に携わるなど、ドイツ現代音楽界に多大な影響を与え続けました。そして2016年3月25日、生まれ故郷であるミュンヘンにて、80余年の実験と越境に満ちた生涯を閉じました。
【本日のご紹介曲:5つの分割によるインベンション(原題:Inventionen in 5 Raten)(2004年)】
この作品は2台のマリンバのために書かれたもので、リードルが数十年にわたりストックしてきたリズムや音高の素材を再構成して作られました。彼が提唱する「音楽の建築」が、打楽器の響きを通して鮮やかに表現されています。
【聴きどころ】
1)「分割」というユニークな構成
タイトルの「5 Raten(5つの分割)」が示す通り、一つの音楽的アイデアを一度に提示せず、5つのセクションに分けて異なる角度から見せていく手法が、知的な興奮を呼び起こします。
2)不変の素材が生む変容
「常に同じ素材を使い、それを徹底的に使い尽くしてきた」という本人の言葉通り、限られた音の断片が万華鏡のように組み合わさり、抽象的でありながら豊かな変化を生み出す過程が魅力です。
3)理知的な構成と衝動の融合
緻密に計算された数学的な構造を持ちながらも、随所に現れる「Subito-Furor(突発的な激情)」が、マリンバの鋭いアタックと共に聴き手に強いインパクトを与えます。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
リードル、ヨーゼフ・アントン:5つの分割によるインベンション
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