一日一曲(1753)ブルーム、ルーブ:スプリング・フィーバー
本日は、没後50年(1976年3月30日没)を迎えらえたアメリカの作曲家兼ピアニスト、ルーブ・ブルームさんの曲をご紹介します。
【ルーブ・ブルーム:ジャズの色彩とクラシックの気品を融合させた、アメリカ音楽黄金期を彩るピアニスト兼作曲家】
ルーブ・ブルーム(Rube Bloom)は、1902年4月24日、アメリカ合衆国のニューヨーク州ニューヨークに生まれました。幼少期から類まれなピアノの才能を示した彼は、弱冠10代でプロのピアニストとして活動を開始します。1920年代に入ると、当時流行していた技巧的で遊び心あふれる「ノベルティ・ピアノ」の分野で頭角を現し、1926年には代表作「スプリング・フィーバー(Spring Fever)」を発表。その華麗な演奏技術で聴衆を魅了しました。
彼のキャリアにおける大きな転機は1928年です。ヴィクター・トーキング・マシン・カンパニー(後のRCAヴィクター)が主催した作曲コンテストに、南部アメリカの情緒をクラシック的な構成で描いた組曲『ソング・オブ・ザ・バイユー(Song of the Bayou)』を出品。見事第1位に輝き、5,000ドルという当時としては破格の賞金を獲得しました。この成功により、彼はジャズ・ピアニストという枠を超え、洗練された「ライト・クラシック」やポピュラー音楽の作曲家としての地位を確立します。
1930年代から40年代にかけては、ジョニー・マーサーら著名な作詞家と共作し、「Don’t Worry ‘Bout Me」や「Give Me the Simple Life」といった、今日でもスタンダードとして愛される名曲を次々と発表しました。晩年もニューヨークを拠点に、教育用ピアノ曲集の出版や音楽活動を精力的に続け、アメリカ音楽の発展に寄与しました。
そして、1976年3月30日、生誕の地でもあるニューヨークにてその豊かな音楽人生に幕を閉じました。
【本日のご紹介曲:スプリング・フィーバー】
この曲は、1926年、ブルームが24歳の時に発表した「ノベルティ・ピアノ」の代表作の一つです。1920年代のアメリカでは、ピアノの技巧を競い合うような、速いテンポで軽快な楽曲が流行していました。「スプリング・フィーバー(知恵熱、あるいは春の浮かれた気分)」というタイトルの通り、春の訪れに心を躍らせるような、弾むリズムと華やかな旋律が印象的な作品です。
【聴きどころ】
1)躍動感あふれる「シンコペーション」
リズムの重心をあえてずらす手法が多用されており、まるでお洒落なステップを踏んでいるような、独特の「スウィング感」を楽しむことができます。
2)万華鏡のように変化する転調
曲の途中で次々と調性が変わっていく様子は、春の変わりやすい天気や、次々に芽吹く花々のような色彩感を与えてくれます。
3)超絶技巧を凝らしたピアノの音色
全編を通して細かな音が敷き詰められており、まるでピアノの鍵盤の上を指がダンスしているかのような、軽やかでキラキラとした音の響きが魅力です。
※「ノベルティ・ピアノ(Novelty Piano)」とは?
「ノベルティ(珍しいもの、斬新なもの)」という名の通り、1920年代のアメリカで爆発的に流行したピアノ音楽のスタイルです。クラシックの基礎を持つピアニストたちが、ジャズやラグタイムの要素を取り入れ、高度なテクニックを駆使して作り上げました。
1. ラグタイムとの違い
先行する「ラグタイム」がゆったりとした情緒を持つのに対し、ノベルティ・ピアノはより速いテンポで、機械的・未来的な響きを好みます。自動ピアノ(ピアノ・ロール)の普及とともに発展したため、人間が弾ける限界に近いような、非常に細かく複雑な音符の並びが特徴です。
2. 都会的なユーモア
ラグタイムがアメリカ南部の民俗的なルーツを持つのに対し、ノベルティ・ピアノはニューヨークなどの都会的な社交場で磨かれました。曲名も「子猫の鍵盤(Kitten on the Keys)」や今回の「スプリング・フィーバー」のように、日常のふとした光景をウィットたっぷりに描写したものが多いです。
3. 音楽的な洗練
単なる流行歌ではなく、印象派音楽(ドビュッシーなど)に見られるような近代的な和音や、全音音階(ホールトーン・スケール)を巧みに取り入れています。そのため、聴き心地は非常に軽快でありながら、音楽理論的には非常に高度で、クラシックの素養が色濃く反映されています。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ブルーム、ルーブ:スプリング・フィーバー
ブルーム、ルーブ:スプリング・フィーバー(amazon music)
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