一日一曲(1754)トルカノフスキー、ヴェルナー:トリオ ’79

 本日は、生誕100年(1926年3月30日生)を迎えらえたドイツの作曲家兼ヴァイオリニスト兼指揮者、ヴェルナー・トルカノフスキーさんの曲をご紹介します。

【ヴェルナー・トルカノフスキー:ドイツから逃れた天才ヴァイオリニストにして、ニューオーリンズの音楽黄金時代を築き上げた不屈の指揮者】
 ヴェルナー・トルカノフスキー(Werner Torkanowsky)は、1926年3月30日にドイツのベルリンで生まれました。ユダヤ系の家系であった彼は、ナチス政権の迫害を逃れるため、6歳の時に家族とともにパレスチナへ移住し、過酷な環境のキブツ(農業共同体)で少年時代を過ごしました。
 1948年、22歳でアメリカへと渡り、当初はヴァイオリニストとしての道を歩み始めます。しかし、指揮への情熱を断ちがたく、巨匠ピエール・モントゥーに師事して指揮法を徹底的に学びました。彼のキャリアが決定的に転換したのは1961年、若手指揮者の登竜門である「ナウムブルク指揮者コンクール」での優勝でした。
 この成功を機にニューヨーク・フィルハーモニックなどの名門楽団を指揮し、1963年にはニューオーリンズ交響楽団(現在のルイジアナ・フィルハーモニー管弦楽団)の音楽監督に就任します。1977年までの14年間にわたり、同楽団の演奏水準を劇的に向上させ、現代音楽の普及にも情熱を注ぎました。
 1981年からはメイン州のバンゴー交響楽団の音楽監督を務め、地域の音楽文化振興に尽力しながら、晩年は作曲家としてもその才能を開花させました。指揮者、独奏者、そして作曲家として音楽に全てを捧げた彼は、1992年10月20日、癌のためメイン州バー・ハーバーにて66歳でその生涯を閉じました。

【本日のご紹介曲:トリオ’79(Trio ’79)】
 この作品は、彼がニューオーリンズ交響楽団のポストを退いた直後の1979年に書き上げられた、バイオリン、チェロ、ピアノのためのピアノ三重奏曲です。指揮者としての華やかな舞台から一歩退き、自らの内面と深く向き合った時期の、極めて密度の高い名品です。

【聴きどころ】
1)4つの感情的なタイトル
 全4楽章にはそれぞれ「祝祭」「哀願」「哀歌」「確信」という標題がついています。人の心の揺れ動きを音で綴ったような、ストーリー性のある構成に耳を傾けてみてください。
2)弦楽器を知り尽くした旋律
 自身が優れたヴァイオリニストであったことから、弦楽器の鳴らし方が非常に効果的です。特に第3楽章「哀歌」での、むせび泣くような弦の響きは胸を打ちます。
3)緻密なアンサンブルの妙
 3つの楽器が対等にぶつかり合い、溶け合う知的な対話が魅力です。現代的な響きの中にも、古典的な構築美が感じられるバランスの良さが際立っています。

 本日は作曲者の自作自演盤でどうぞ!

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
トルカノフスキー、ヴェルナー:トリオ ’79

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