一日一曲(1003)スメタナ、ベドジフ:弦楽四重奏曲第1番ホ短調「わが生涯より」

 本日は、生誕200年(1824年3月2日生)を迎えらえたチェコの作曲家兼ピアニスト兼指揮者、ベドジフ・スメタナさん特集の3回目です。

 スメタナさんの設立した音楽学校は成功を収めていましたが、コンサートピアニストとしては満足のいく評価が得られていない、とスメタナさんは感じていました。そこで、スメタナさんは外国で活躍することとし、1856年10月にスウェーデンに赴きました。この転戦は功を奏し、スメタナさんは成功に恵まれました。ただ、私生活では1859年に妻カテジナを亡くし、その翌年には再婚するなど激動の時代が続いていました。やはり故郷で活躍したい、という思いは強くなり、1862年にはプラハに戻ります。同時期にチェコのオペラを盛り立てようという動きが強くなったのを機会に、スメタナさんはあまり得意でなかったチェコ語の勉強を開始するなど様々な努力を行い、その流れについていこうとしました。その結果、スメタナさんはチェコ独自のオペラをいくつか作曲されています。そしてその功績は、スメタナさんを「チェコの偉大な作曲家」という位置に押し上げることとなりました。
 晩年には健康を害し、耳が聞こえなくなってしまいました。そのような中でもスメタナさんは作曲を続けられました。

 本日は、耳が聞こえなくなった直後に書かれた曲、弦楽四重奏曲第1番ホ短調「わが生涯より」をご紹介します。耳が完全に聴こえなくなったのが1876年の10月で、本曲は同年の10月から12月にかけて作曲されました。
 表題からもお分かりの通り、自叙伝的な性質を持っています。4つの楽章で構成されていますが、それぞれの楽章にはスメタナさん自身によるコメントが遺されています。
  第1楽章「私の青年時代の強い芸術への憧れ、ロマンティックな雰囲気」
  第2楽章「楽しかった青春の日々、私はダンス狂だった
  第3楽章「のちに私の妻となった少女との初恋の幸せな思い出」
  第4楽章「民族的な要素を自らの音楽に採り入れる術を見い出し、軌道に乗って喜んでいたところに、突然耳鳴りがして、聴覚を失い挫折する」
 第4楽章の終わりの部分(本日の演奏では336分秒あたり)では、難聴に陥ったスメタナさんが聴こえていたという「幻聴」の音を表現した部分が出てきます。
第1ヴァイオリンが高い音を奏でる部分ですね。
 スメタナさんの人生が集約された本曲は、スメタナさんを語る上では欠かせない曲と言えるでしょう。個人的には第4楽章の輝かしいテーマ、「幻聴」部分に続いて第1楽章の苦難のテーマが再現された直後にあらわれる、静かな悟りの境地のようなコラール風の旋律の部分(4分17秒あたりから)、そしてほのかな明るさの中で静かに曲が閉じられてる部分などに心動かされました。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
スメタナ、ベドジフ:弦楽四重奏曲第1番ホ短調「わが生涯より」

スメタナ、ベドジフ:弦楽四重奏曲第1番ホ短調「わが生涯より」(MP3ダウンロード)

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