一日一曲(1324)クライスラー、フリッツ:弦楽四重奏曲イ短調
本日は、生誕150年(1875年2月2日生)を迎えらえたオーストリア出身のヴァイオリニスト兼作曲家、フリッツ・クライスラーさん特集の4回目です。
アメリカ国籍取得の2年前には交通事故で重傷を負い、一時は「再起不能」とも伝えられましたが、奇跡的にカムバックし、放送への出演やリサイタルを断続的に行いました。が、負傷の後遺症(視力障害や突発的な記憶喪失などで、音楽的な感覚は奇跡的に障害から逃れた)が尾を引いたこともあり、1950年に引退しました。1962年、ニューヨークで心臓疾患のため死去し、ブロンクスのウッドローン墓地に埋葬されました。
本日の曲は「弦楽四重奏曲イ短調」です。ヴァイオリン独奏曲の作曲が多いクライスラーさんとしては、珍しいジャンルの作品で、私も今回調べてびっくりいたしました。1919年、作曲者44歳の時の作品で、同年私的なレセプションの時に演奏されましたが、公的な世界初演は2年後の1921年、ロンドンで行われました。クライスラーさんは、本曲を高く評価されていたようで、「ウィーンに対する私の告白」と表現されていらっしゃいます。初演から 14年後に、自ら第一ヴァイオリンを演奏してこの曲を録音されました。この歴史的録音に参加するために選ばれたのは、ロンドン弦楽四重奏団のメンバーで第2ヴァイオリン奏者トーマス・ペトレとヴィオラ奏者ウィリアム・プリムローズ、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の首席に任命されたばかりのオーストラリアのチェリスト、ローリ・ケネディでした。本日はそのときの演奏をご紹介します。
曲は4楽章形式で、演奏時間は約半時間の、堂々たる大作です。魅力的なメロディが随所にちりばめられています。広く知られていないのが勿体ない曲です。個人的には第3楽章が気に入りました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
クライスラー、フリッツ:弦楽四重奏曲イ短調