一日一曲(1323)クライスラー、フリッツ:ウィーン奇想曲

 本日は、生誕150年(1875年2月2日生)を迎えらえたオーストリア出身のヴァイオリニスト兼作曲家、フリッツ・クライスラーさん特集の3回目です。

 1914年に勃発した第一次世界大戦では陸軍中尉として召集を受け、東部戦線に出征しますが、重傷を負って後送され、間もなく名誉の除隊となりました。除隊後はニューヨークの自宅に戻り、療養しながら演奏活動を再開、しかし、アメリカにとってオーストリアは敵国だったため、活動はあまり軌道に乗りませんでした。大戦終結後はヨーロッパ楽壇に復帰しました。1923年には来日されています。1924年から1934年までベルリンに拠点を置いていましたが、ナチスが政権を獲得すると状況は一変、ドイツへの残留要請を断固拒絶し、1938年、オーストリアがナチス・ドイツに併合されたのを機にフランス国籍を取得し、パリに移住しました。1939年、ヨーロッパに第二次世界大戦の足音がしのびよると、アメリカ永住を決意してニューヨークに移り、1943年にはアメリカ国籍を取得、以後の生涯では一度もヨーロッパに戻ることはありませんでした。

 本日の曲は、「ウィーン奇想曲」です。作品番号は2、作曲当初から自作であることを公表しており、一連の「贋作」とは一線を画しています。それらの「贋作」と本曲を一緒の演奏会でプログラムに入れることもしばしばだったようで、批評家からは「有名どころの作曲家と自分の作品とを並べて演奏するなどおこがましい」といった批評もされていたこともあったそうです。今となってはどちらもクライスラーさんの作品ですから、笑い話になってしまいますが。
 本曲は個人的にクライスラーさんの書いたウィンナ・ワルツの中で一番好きな作品です。ワルツの部分の旋律が実に美しい!映画「アマデウス」でサリエリがモーツァルトの楽譜を見て、その美しさに思わず楽譜を取り落としてしますシーンがありますが、その時の音楽が本曲でも十分遜色ない、と個人的に思っています。58秒から1分間ほどの部分です。また、クライスラーさんの演奏が味がありますね!ポルタメントが絶妙です。ポルタメントはやりすぎるとちょっと下品に聴こえてしまうのですが、さすがクライスラーさんはワルツの本場の出身、勘所を見事に押さえています。

 NMLには「1917年版」というものもありまして、こちらも挙げておきます。ただ、こちら、後から作られたものなんですかね?もし本当にそうだとしたら、「改悪」ですね。1917年版が先にあって、それを「原曲」に仕上げたように思えるのですが、どうなのでしょう?

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
クライスラー、フリッツ:ウィーン奇想曲

クライスラー、フリッツ:ウィーン奇想曲(MP3ダウンロード)

<参考>
クライスラー、フリッツ:ウィーン奇想曲(1917年版)

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です