一日一曲(1796)ハルゼー、アーネスト:カンティレーナ 変イ長調

 本日は、生誕150年(1876年4月生)を迎えらえたイギリスの作曲家、アーネスト・ハルゼーさんの曲をご紹介します。

【アーネスト・ハルゼー:株式仲買人や風刺作家として世を賑わせながら、教会のオルガンから敬虔な祈りの音を響かせた多才な表現者】
 アーネスト・ハルゼー(Ernest Halsey)は、1876年4月、ロンドン南部のバタシー(あるいは南東部のアナーリー)で、会衆派教会の牧師の息子として誕生しました。サマセット州のタウントンで教育を受けた彼は、若くしてロンドンの金融界に身を置き、株式仲買人やジャーナリスト、さらには大手保険会社の重役として、実業界の最前線でキャリアを築きました。
 実業家として多忙な日々を送る傍ら、音楽家としての活動も極めて本格的でした。1903年頃からはアナーリー会衆派教会のオルガニスト兼合唱指揮者を務め、礼拝のために数多くのオルガン曲や聖歌、カンタータを書き上げました。彼の作品は当時の主要な音楽出版社から次々と刊行され、その端正で叙情的なスタイルは、当時のイギリス教会音楽界において独自の地位を確立しました。
 さらに、彼は1913年頃から「アシュリー・スターン(Ashley Sterne)」というペンネームで、ユーモア作家・風刺家としても大きな成功を収めました。雑誌『ロンドン・オピニオン』や『パンチ』への寄稿に加え、イギリスの名優スタンリー・ホロウェイの舞台脚本を手掛けるなど、その多才ぶりは驚くべきものでした。経済、文学、そして宗教音楽という異なる分野を自在に行き来しながら、彼は独自の芸術性を追求し続けました。
 晩年まで多彩な活動を続けたハルゼーは、1939年6月20日、ロンドンのメリルボーンにて63歳でその生涯を閉じました。

【本日のご紹介曲:カンティレーナ 変イ長調 Op.26, No.1】
 作曲年:1915年
 この曲は、ハルゼーが実業家・作家として多忙を極める中で、心の平穏を求めて書き上げたかのような純度の高い小品です。「カンティレーナ(叙情的歌唱曲)」という題名の通り、オルガンを「歌わせる」ことに徹した名曲です。

【聴きどころ】
1)祈りの深さを湛えた冒頭主題
 変イ長調という温かく落ち着いた調性で奏でられる旋律は、牧師の息子として育った彼のルーツを感じさせます。都会の喧騒を忘れさせるような、透き通った清らかさが聴き手の心に染み渡ります。
2)「ユーモア作家」の顔を伏せた真摯な抒情
 風刺作家アシュリー・スターンとしての鋭い知性とは対照的に、ここには一切の装飾や皮肉がありません。ハルゼーという人物の、最も敬虔で内省的な一面が音となって現れています。
3)オルガン固有の色彩豊かな響き
 右手のソロ旋律を支える左手と足鍵盤の絶妙な和声の移ろいは、当時のイギリスのオルガン音楽の粋を集めたものです。ストップ(音色)の切り替えによる、光が差し込むような色彩の変化にぜひ注目してください。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ハルゼー、アーネスト:カンティレーナ 変イ長調

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