一日一曲(1799)ラパーラ、ラウル:スペインのリズム

 本日は、生誕150年(1876年5月13日生)を迎えらえたフランスの作曲家、ラウル・ラパーラさんの曲をご紹介します。

【ラウル・ラパーラ:スペインの土着的な息遣いを、フランスの洗練された筆致で刻み込む異才】
 ラウル・ラパーラ(Raoul Laparra)は、1876年5月13日にフランスのボルドーで生を受けました。パリ音楽院にて、アンドレ・ジェダルジュ、ジュール・マスネ、そしてガブリエル・フォーレという偉大な師のもとで研鑽を積み、1903年には若手作曲家の最高の栄誉であるローマ賞のグランプリを受賞しました。
 彼の音楽人生を決定づけたのは、画家であった兄ウィリアムと共に1897年に初めてスペインを訪れたことでした。ラパーラは、当時の流行であった表面的な異国趣味に満足せず、自ら現地に深く入り込み、民俗音楽学者フェデリコ・オルメダらと交流しながら、スペイン音楽の真髄であるリズムと精神性を徹底的に調査しました。その成果は、1908年に初演され国際的な成功を収めた歌劇『はばたき(La Habanera)』に結実します。その後もスペインやバスクの伝統に根ざした独自の作風を展開し、パリ音楽院での後進の指導や音楽批評の分野でも足跡を残しました。
 晩年も創作への情熱は衰えませんでしたが、時代は第二次世界大戦の渦中にありました。1943年4月4日、パリ近郊のブローニュ=ビヤンクールにて、連合軍による空爆という不慮の惨禍に巻き込まれ、66歳でその生涯を閉じました。スペインの野性味あふれるリズムと、フランス音楽の色彩感を融合させ続けた、真の探求者でした。

【本日のご紹介曲:『スペインのリズム』(Rythmes espagnols, 1913年)】
 1913年に出版された全7曲からなるピアノ組曲です。スペイン各地の舞曲の形式を借りながらも、単なる風景描写に留まらず、ピアノという楽器の表現力を最大限に生かして、そのリズムが持つ心理的な深淵を描き出しています。
 本日は作曲者自身の演奏で、第2曲:ティエントス(Tientos)、第4曲:カレセーラ(Calesera)、第6曲:ソレア(Solea)をお楽しみください!

【聴きどころ】第2曲:ティエントス(Tientos)
 フラメンコの「カンテ・ホンド(深い歌)」に由来する、内省的で重厚な楽曲です。
1)即興的な揺らぎ
 冒頭から見られる、何かに触れ、確かめるような即興的なパッセージが、聴き手を緊張感のある独特な世界観へと引き込みます。
2)執拗なリズムの骨格
 4分の4拍子のなかで、スペイン的なフリギア旋法を背景にした重々しい低音のリズムが、内に秘めた情熱を静かに、しかし力強く刻みます。
3)装飾音の鋭さ
 突如として現れる鋭い装飾音が、沈黙を切り裂くような衝撃を与え、曲全体に深い陰影とドラマ性をもたらしています。

【聴きどころ】第4曲:カレセーラ(Calesera)※演奏は1分23秒あたりより
 馬車の御者(カレセーロ)の歌をモチーフにした、組曲の中でも特に躍動感に満ちた一曲です。
1)疾走する駆動性
 馬の蹄の音を思わせる、一貫して軽快で力強いリズムが特徴です。ピアノの鍵盤上を縦横無尽に駆け抜けるような疾走感が楽しめます。
2)野性的なアクセント
 予測できない位置に置かれたアクセントや強弱の対比が、御者の鞭の音や掛け声のような、土着的で生々しいエネルギーを感じさせます。
3)光り輝く色彩感
 高音域でのきらびやかな響きと急速な転調が、太陽が照りつけるスペインの乾いた大地と、その光の眩しさを鮮やかに描写しています。

【聴きどころ】第6曲:ソレア(Solea)※演奏は3分5秒あたりより
 「フラメンコの母」とも称されるソレアのリズムを用いた、孤独と誇りを感じさせる格調高い楽曲です。
1)孤独を象徴する「間」
 「孤独(Soledad)」を意味する名の通り、音と音の間に存在する静寂が、深い哀愁と祈りのような内面的な美しさを際立たせています。
2)情念の爆発
 抑制された導入部から、徐々に感情が昂り、和音が厚みを増していく過程は圧巻です。ラパーラの緻密な構成力が光る展開です。
3)高潔な幕切れ
 感情の嵐が過ぎ去った後、再び訪れる静寂の中で消え入るように終わるラストは、フランス的な洗練された余韻を聴き手に残します。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ラパーラ、ラウル:スペインのリズム

ラパーラ、ラウル:スペインのリズム(CD)

\ 最新情報をチェック /

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です