一日一曲(1449)クライスラー、フリッツ:オーカッサンとニコレット「中世のカンツォネッタ」
本日は、今年(2025年)5月19日にお亡くなりになられたヴァイオリニスト、小林武史さんの追悼です。
小林武史さんは1931年2月にインドネシアのスマトラ島で生まれました。当時父親の小林米作(記録映画カメラマン兼映画プロデューサー)がコダックのスマトラ店で働いていた関係、とのことです。帰国し、1941年、10歳の時に「スズキメソード」で有名な鈴木鎮一氏に師事、ヴァイオリンの練習を始めました。1949年には第18回毎日音楽コンクールヴァイオリンの部で第1位に輝いています。1955には東京交響楽団のコンサートマスター、1961年にはブルノ国立フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスター、1964年にはオーストリア・リンツ・ブルックナー管弦楽団のコンサートマスター、1967年には読売日本交響楽団のコンサートマスターと、数々の楽団でコンサートマスターを務められました。1988年度第43回文化庁芸術祭賞(音楽部門)受賞、1996年度第51回同賞(音楽部門大賞)受賞と、数々の栄誉にも浴されています。2025年5月19日、膀胱癌のため94歳で亡くなられました。実弟の小林健次さん(2021年6月没)もヴァイオリニストで、東京都交響楽団のコンサートマスターや、桐朋学園大学教授として活躍されました。
本日の曲は、今年1月に記念年作曲家特集で取り上げたフリッツ・クライスラーの作品の中から、『オーカッサンとニコレット「中世のカンツォネッタ」』をご紹介します。本曲、私は初めて聴いた曲で、珍しい曲なのかと思ったのですが、NMLには多数の録音がありました。「クライスラー全集」などには当然入ってくるでしょうから、そういった全集ものをいろいろなヴァイオリニストが出されている、ということなのかもしれません。
タイトルの「カンツォネッタ」とは、イタリア語で『小さなカンツォーネ』=小歌曲 を意味します。『オーカッサンとニコレット』というのは、創作年および作者不詳の13世紀フランスの純愛小説のタイトルです。南仏の王子と奴隷少女(じつはとある領主の娘)の身分違いの恋物語です。本曲は、個人的には、物語の大団円のところで若い二人が踊る情景をイメージしました。
本日の演奏は2003年、小林さん70歳の時の録音です。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
クライスラー、フリッツ:オーカッサンとニコレット「中世のカンツォネッタ」