一日一曲(1903)ヘッド、マイケル:アルカディアの船
本日は、没後50年(1976年8月24日没)を迎えらえたイギリスの作曲家、マイケル・ヘッドさんの曲をご紹介します。
【マイケル・ヘッド:自作の歌唱を自らのピアノ伴奏で世界的に披露し、英国歌曲の魅力を広めた才気あふれる声楽家兼ピアニスト】
マイケル・ヘッド(マイケル・デューアー・ヘッド)は、1900年1月28日にイギリスのイーストボーンで誕生しました。声楽家でピアニストでもあった母親の影響を受け、幼少期からピアノや声楽の訓練を始めました。
王立音楽アカデミーへ進学したものの、第一次世界大戦の影響により1918年に徴兵検査を受けることとなります。兵役自体は不合格となりましたが、軍需工場での勤務を命じられました。彼は工場での厳しい労働の傍らで作曲活動を続け、この時期に代表作となる歌曲集を生み出しました。
終戦後はアカデミーへ復学してフレデリック・コーダーらに師事し、高い評価を得て卒業しました。1927年には母校のピアノ科教授に就任し、1975年まで長年にわたり後進の指導にあたりました。また1929年からは、自らの歌唱を自筆のピアノ伴奏とともに演奏するスタイルでリサイタルを開始し、イギリス国内にとどまらず世界各地で演奏旅行を行い絶大な人気を博しました。
第二次世界大戦中もロンドンにとどまり、避難先や工場で音楽を届け続けました。戦後も教育者・演奏家として精力的に活動を続けましたが、1976年8月24日、音楽検定員としての出張先であった南アフリカのケープタウンにて突然の病に倒れ、76歳でその生涯を閉じました。
【本日のご紹介曲:アルカディアの船(The Ships of Arcady)】
軍需工場で働いていた1918年に作曲され、1919年に出版された歌曲集『月のふちを越えて(Over the Rim of the Moon)』の第1曲です。歌詞には、第一次世界大戦の戦場となったイープルで戦死したアイルランドの詩人フランシス・レドウィッジ(Francis Ledwidge, 1887-1917)の詩が用いられています。
理想郷アルカディアを目指して幻想的な海を渡っていく小さな船の姿を描いた詩であり、戦場へ赴き二度と戻らなかった兵士たちへの哀悼の意が、美しく穏やかな旋律に託されています。
【聴きどころ】
1)静けさを際立たせる優しい伴奏の音色
冒頭から低音で穏やかに響くピアノの伴奏は、朝もやの漂う静かな海面と、波間に揺れながら進む舟のモチーフを情緒豊かに表現しています。
2)ノスタルジックで美しく流れるような旋律
声楽パートのメロディラインは非常にシンプルでありながら、どこか切なくノスタルジックな響きを持っており、澄んだ歌詞の世界観を際立たせています。
3)夢幻的な世界観と静寂への消えゆく結末
曲の後半に向けて静かに高まりを見せた後、船が波の彼方へと消え去り、残された者がひとり海を見つめる切ない余韻が繊細に表現されています。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ヘッド、マイケル:アルカディアの船
ヘッド、マイケル:アルカディアの船(amazom music)
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