一日一曲(1890)レグレンツィ、ジョヴァンニ・バッティスタ:ソナタ第5番
本日は、生誕400年(1626年8月12日生)を迎えらえたイタリアの作曲家、ジョヴァンニ・バッティスタ・レグレンツィさんの曲をご紹介します。
【ジョヴァンニ・バッティスタ・レグレンツィ:ヴェネツィア・バロックの黄金期を築き、後世のバッハやヴィヴァルディに多大な影響を与えた対位法の巨匠】
ジョヴァンニ・バッティスタ・レグレンツィ(Giovanni Legrenzi)は、1626年8月12日にベルガモ近郊のクルゾーネ(Clusone)で生まれました。ヴァイオリニストであった父から最初の音楽教育を受けたと考えられており、地元のベルガモにあるサンタ・マリア・マッジョーレ大聖堂でオルガニストとして音楽家としてのキャリアをスタートさせます。1656年にはフェッラーラの アッカデミア・デッロ・スピリト・サント の楽長に就任し、宗教声楽やオペラ、そして緻密な器楽ソナタの分野で急速にその名を高めていきました。その後、さらなる飛躍を求めて神聖ローマ帝国皇帝レオポルド1世の給仕職やウィーンの宮廷楽長職に応募しますが、これは惜しくも叶いませんでした。しかし、このウィーン宮廷へのアプローチの過程で、1673年には皇帝レオポルド1世に捧げられた伝説的な器楽曲集『ラ・チェトラ(La Cetra)』Op. 10が出版されることになります。
1670年頃までに舞台音楽の中心地であったヴェネツィアへ移住したレグレンツィは、オペラ作曲家として輝かしい成功を収める傍ら、慈善施設(コンセルヴァトーリオ)である メンディカンティ修道院 の音楽監督を務めました。そして1681年には、当時のイタリア音楽界の最高峰ポストの一つであったサン・マルコ大聖堂の副楽長に就任し、1685年にはついに大楽長へと昇進を果たします。
サン・マルコ大聖堂では管弦楽団の規模や配置を大幅に再編・拡充し、ヴェネツィア派音楽の色彩豊かな重厚さを極限まで高めました。彼の卓越した 対位法 技術と対話的な対句法は、弟子のカルダーラやロッティをはじめ、若いヴィヴァルディらにも受け継がれ、さらにバッハやヘンデルといった後代の巨匠たちにも自作のテーマとして引用されるほど高く評価されました。晩年まで多忙を極めたレグレンツィは、1690年5月27日、音楽的栄誉を極めたヴェネツィアの地で63年の生涯を閉じました。
【本日のご紹介曲:ソナタ第5番(曲集『ラ・チェトラ』Op.10より)】
1673年にヴェネツィアで出版され、音楽愛好家であった神聖ローマ皇帝レオポルド1世に献呈された曲集『ラ・チェトラ(La Cetra)』Op.10に収められた器楽アンサンブルの傑作です。タイトルの「ラ・チェトラ(竪琴)」は古代の弦楽器に由来し、後にヴィヴァルディも同名の協奏曲集(Op.9)を残したことで知られます。
出版時のオリジナル編成はヴィオラ・ダ・ガンバのコンソート(合奏)のために書かれており、ハプスブルク宮廷の弦楽好みに配慮しつつも、同時にヴァイオリン族(ヴァイオリン2、ヴィオラ、通奏低音など)でも演奏できるよう移調譜が添えられていました。教会ソナタの伝統を踏襲しながらも、ヴェネツィア派特有の明瞭でダイナミックな対句表現と、伝統的なポリフォニー(多声法)が深く融合した重厚な響きを堪能できる1曲です。
【聴きどころ】
1)4つのパートが織りなす緻密な対位法の密室
高音から低音まで4つの弦パートが対等にテーマを受け渡し、複雑に絡み合う対位法が見事です。個々の旋律が互いに問いかけ、応え合うような緊密なポリフォニーの美しさは、レグレンツィの智的な作曲様式の真骨頂と言えます。
2)旋律の急速な展開と劇的な感情表現(アフェクト)
短い動機やテーマが次々と繰り出され、テンポや表情が刻一刻と変化していきます。急緩のコントラストや、バロック期ならではの切なく深い不協和音の響かせ方など、静けさと情熱が交錯するドラマティックな展開が見事です。
3)古風な気品とモダンな和声感の絶妙なバランス
17世紀前半のルネサンス的ルーツを感じさせる伝統的で厳格な対位法を用いながらも、近代的な長短調の調性感が顔を出す巧妙な和声展開(旋法と調性の融合)が施されています。伝統を重んじつつも新たなバロック様式へと橋渡しをした、洗練された音作りを体感できます。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
レグレンツィ、ジョヴァンニ・バッティスタ:ソナタ第5番
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