一日一曲(1891)ベスト、ウィリアム・トーマス:4つの演奏会用幻想曲より第2番「Welsh March」による幻想曲(Gorhoffedd Gwyr Harlech)
本日は、生誕200年(1826年8月13日生)を迎えらえたイギリスの作曲家、ウィリアム・トーマス・ベストさんの曲をご紹介します。
【ウィリアム・トーマス・ベスト:ヴィクトリア朝の圧倒的な演奏技巧とユーモアで「オルガン編曲の父」と称えられた巨匠】
1826年8月13日にイギリス北部のカーライルで生まれたウィリアム・トーマス・ベストは、地元の弁護士であった父のもとで育ちました。幼少期から音楽的才能を示した彼は、地元のカーライル大聖堂の器官奏者からオルガンの演奏法を学びます。1840年に14歳という若さでリヴァプールのペンブローク・チャペルのオルガニストに就任すると、その驚異的な腕前で瞬く間に注目を集める存在となりました。その後、リヴァプール・フィルハーモニー協会のオルガニストを経て London に渡り、クリスタル・パレス(水晶宮)やロンドンの著名な教会で演奏活動を展開していきます。1855年にリヴァプールへ戻ったベストは、セント・ジョージズ・ホールに設置されたウィリス社製の名器オルガンの専属奏者に任命されました。当時、世界有数の港湾都市として繁栄を極めていたリヴァプールで、彼は毎週のようにコンサートを開催し、バッハの古典から同時代の大作、さらには管弦楽曲の自作編曲版まで、膨大なレパートリーを披露して聴衆を魅了し続けました。1871年にはクリスタル・パレスの大オルガンお披露目演奏を務め、1890年には遠くオーストラリアのシドニー市庁舎へ招聘されて演奏会を開くなど、まさに19世紀におけるヴィクトリア朝最高のオルガン演奏家としてその名を世界に轟かせました。
並外れた演奏技巧に加え、辛辣でウィットに富んだ人柄でも愛されたベストは、自作曲の出版や無数の編曲作品を手掛け、「オルガン編曲の父」としての地位も確立しました。体調の悪化に伴い1894年に惜しまれつつ現役を引退した彼は、1897年5月10日に愛するリヴァプールの地で70年の生涯を閉じました。
【本日のご紹介曲:4つの演奏会用幻想曲より第2番「Welsh March」による幻想曲(Gorhoffedd Gwyr Harlech)】
ウェールズの有名な愛国歌「ハーレックの男たち(Men of Harlech / Gorhoffedd Gwyr Harlech)」の主題をもとに書かれた、華やかで技巧的なオルガン作品です。この楽曲は1876年に出版されたもので、奇しくもアメリカ独立100周年を記念してフィラデルフィア万博に設置された「センテニアル・オルガン」と同じ年に誕生しました。ダイナミックな導入部から始まり、高貴な愛国歌のテーマが多彩な変奏を通じて姿を変えていくスリリングな展開が特徴的です。豪快なフル・オルガンの轟音と繊細なストップ(音色)の絶妙な対比など、ベストならではの華麗なオルガン奏法が余すところなく発揮されています。
【聴きどころ】
1)雄大な導入部とテーマの提示
冒頭のドラマチックで勢いのある序奏を経て、ウェールズの誇り高き名旋律「ハーレックの男たち」が堂々と姿を現す瞬間は圧巻です。
2)音色の激しいコントラスト
オルガン全開の重厚で大迫力なサウンド(フル・オルガン)と、森のフルートを思わせる穏やかな音色や「ヴォックス・フマーナ(人間の声を模した音色)」といった静けさを湛えた音色とが交互に立ち現れる、万華鏡のような表情の変化を楽しめます。
3)圧巻のクライマックスへ向かうペダル・ポイント
曲の終盤、足鍵盤(ペダル)で保たれる圧倒的な持続音に乗って音楽が急速に熱を帯び、そのまま一気にスリリングなフィナーレへと雪崩れ込んでいく怒涛の展開は最大の聴き所です。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ベスト、ウィリアム・トーマス:4つの演奏会用幻想曲より第2番「Welsh March」による幻想曲(Gorhoffedd Gwyr Harlech)
ベスト、ウィリアム・トーマス:4つの演奏会用幻想曲より第2番「Welsh March」による幻想曲(Gorhoffedd Gwyr Harlech)(amazon music)
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