一日一曲(1892)プリゴージン、リュツィアン・アブラモヴィチ:四季(The Cycle)
本日は、生誕100年(1926年8月15日生)を迎えらえたロシアの作曲家、リュツィアン・アブラモヴィチ・プリゴージンさんの曲をご紹介します。
【リュツィアン・アブラモヴィチ・プリゴージン:前衛的な音響空間とロシアの詩情を融合させた20世紀レニングラード派の鬼才】
リュツィアン・アブラモヴィチ・プリゴージン(Lyutsian Abramovich Prigozhin)は、1926年8月15日にウズベクSSSRのタシュケントで弁護士の家庭に生まれました。幼少期をタシュケントで過ごし基礎的な音楽教育を受けた後、第二次世界大戦後の1946年にレニングラードへ移住しました。同地のレニングラード音楽院に入学し、ウラディーミル・シェルバチョフのもとで作曲を学び、1951年に卒業を果たします。
作曲家として早くから才能を発揮し、3曲の交響曲や歌劇、バレエ『地獄の輪』などの舞台作品、さらには数々の映画音楽から室内楽まで幅広いジャンルで精力的に作品を発表しました。また1967年からは母校レニングラード音楽院で教鞭を執り、没するまで教授として後進の指導に尽力しました。
彼のキャリアにおける大きな転機となったのは、1962年に参加した現代音楽祭「ワルシャワの秋」でした。ここでストラヴィンスキーの『結婚』をはじめ、ルトスワフスキやペンデレツキ、ノーノ、クセナキスといった最先端の前衛音楽に接した彼は激しい衝撃を受け、それまで続いていた創作上のスランプと真摯に向き合うことになります。そして1966年、オラトリオ『イゴリ遠征物語』の初演によって見事な作風の脱皮(ブレイクスルー)を果たしました。
古代ロシア文学やアイスキュロスの悲劇、ダンテやプーシキンなど、極めて広範な文学的関心を持っていたプリゴージンは、古典的な知性と前衛的な音響技法を融合させた独自の合唱作品を数多く遺しました。1991年には人民芸術家の称号を授与され、1994年2月21日にサンクトペテルブルクにて67歳でその生涯を閉じました。
【本日のご紹介曲:無伴奏混声合唱のための『四季(The Cycle)』(1973年作曲)】
アレクサンドル・ブロークの詩に基づく無伴奏混声合唱のための連作『四季(The Cycle)』は、1973年に作曲されたプリゴージンの代表的な合唱作品の一つです。ロシア象徴主義を代表する詩人ブロークが描く自然の巡りや季節の環を題材とし、「秋」「冬」「春」「夏」の全4章で構成されています。
本作では、1960年代以降のソ連音楽界に吹き荒れた「新民俗学波(ニュー・フォークロア・ウェーブ)」の精神を背景に、ロシアの伝統的な民謡歌唱の語り口や節回しを取り入れつつ、前衛的なソノリティ(音響効果)が惜しみなく投入されています。
【聴きどころ】
1)ソノリズムと伝統的旋律の鮮やかな融合
民謡風の親しみやすい旋律線を土台に置きながらも、複雑な不協和音や音塊(クラスタ)、色彩豊かな残響効果(ソノリズム)を組み込んでいる点が特徴です。ロシアの伝統的な歌唱法と現代的な響きの絶妙な協調を聴くことができます。
2)変幻自在なポリリズムとポリメーター(多拍子・多リズム)
声部ごとに異なるリズムや拍子を重なり合わせる緻密な対位法(パート・ライティング)が用いられています。季節の移ろいや自然界の複雑な蠢きが、重層的な声の交錯によって臨場感豊かに表現されています。
3)「声」を極限まで活かした多様なアーティキュレーション
単にメロディを歌うだけでなく、輪唱風のこだま効果や特殊な発声技法を用いることで、合唱団全体を一つの巨大な「音響楽器」として鳴らし切っています。人間の声の表現力を極限まで追求したダイナミックな響きが大きな聴きどころです。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
プリゴージン、リュツィアン・アブラモヴィチ:四季(The Cycle)
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