一日一曲(1905)コハウト、カール:リュート協奏曲ニ長調

 本日は、生誕300年(1726年8月26日生)を迎えらえたオーストリアの作曲家、カール・コハウトさんの曲をご紹介します。

【カール・コハウト:オーストリアの官僚としての本業を果たしながら、ウィーンの音楽界で絶大な信頼を集めた二刀流の天才リュート奏者】
 カール・コハウト(Karl Kohaut)は、1726年8月26日(8月26日受洗)にウィーンで生まれました。宮廷音楽家であった父のもとで音楽的才能を育まれた彼は、ヴァイオリンとリュートの両方に優れた腕前を示しました。
 しかし、コハウトは音楽専業の道を選ばず、安定した生活基盤を求めて帝国官僚としてのキャリアを進みます。仕事の傍ら精力的な音楽活動を続け、1778年には皇帝ヨーゼフ2世の「帝室宮廷・国家事務局」の秘書官に昇進するなど、官僚としての地位を確立しました。
 その一方で、彼の音楽家としての評価は極めて高いものでした。当時、ウィーンで活発なサロンを主催していた音楽保護者バン・スヴィーテン男爵の音楽会に参加し、ハイドンやモーツァルトの弦楽四重奏曲でヴァイオリンを弾いたほか、得意のリュート演奏も披露したとされています。1777年にはウィーン音楽家協会(Tonkünstler-Societät)の演奏会において、自作の交響曲とともにリュート協奏曲を自ら演奏し、同時代の実力派ミュージシャンたちから深い尊敬を集めました。また、珍しい「5弦のウィーン式コントラバス」のための協奏曲を手掛けるなど、先駆的な作曲活動も行っています。
 官僚と音楽家という二つの顔を持ち、ウィーン古典派の発展に大きな足跡を残したコハウトは、1784年8月6日にウィーンにて57歳でその生涯を閉じました。

【本日のご紹介曲:リュート協奏曲ニ長調】
 18世紀半ば、音量の大きいピアノやオーケストラの発達に伴い、リュートという楽器は音楽史の表舞台から急速に姿を消しつつありました。そのような時代の中で書かれたコハウトの「リュート協奏曲 ニ長調」は、ブライトコプフ社の手写本として伝えられている名作です。
 本作品は「Allegro(速く) – Andante molto(ゆっくりと非常に表情豊かに) – Tempo di Menuet(メヌエットのテンポで)」という古典派協奏曲の標準的な3楽章構成をとっています。
 オーケストラ編成ではなく、2本のヴァイオリンとチェロというシンプルな室内楽編成の伴奏が用いられている点が特徴的です。大音量の合奏に埋もれがちな繊細なリュートの音色を活かし、弦楽器とソリストがまるで対話を楽しむかのような、透明感あふれる美しい響きが構築されています。

【聴きどころ】
1)繊細なリュートの音色を引き立てる洗練されたアンサンブル
 響きが繊細で静かなリュートを活かすため、伴奏の弦楽器(ヴァイオリン、チェロ)はソリストの邪魔をせず、対等に会話を交わすようなバランスで緻密に書かれています。室内楽のように親密で透明感のある響きが魅力です。

2)第2楽章(Andante molto)におけるリュートの表情豊かな旋律
 コハウトが好んだ発想標記「Andante molto」が与えられた緩慢楽章では、リュートの音域が存分に活かされています。溢れ出る感情を込めたような装飾音や一音一音のニュアンスが、聴き手の心にしみわたります。

3)第3楽章(Tempo di Menuet)の優雅で軽快なフィナーレ
 18世紀半ばの協奏曲で好まれた、ロンド風のメヌエット形式による終楽章です。ヴァイオリンが主導する優雅なテーマと、リュートがソロで軽やかに美しく奏でるエピソード(挿入部)の対比が見事です。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
コハウト、カール:リュート協奏曲ニ長調

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