一日一曲(1906)マクファーレン、ウォルター:協奏的小品ホ短調
本日は、生誕200年(1826年8月28日生)を迎えらえたイギリスの作曲家、ウォルター・マクファーレンさんの曲をご紹介します。
【ウォルター・マクファーレン:ヴィクトリア朝の英国で後進の指導に情熱を注ぎ、メンデルスゾーンの抒情美を継承したピアノ教育者】
ウォルター・マクファーレン(Walter Cecil Macfarren)は、1826年8月28日にロンドンで劇作家の父のもとに生まれました。兄のジョージ・アレグザンダー・マクファーレンもヴィクトリア朝の英国音楽界を牽引した作曲家です。マクファーレンは王立音楽アカデミーで学び、学生時代の1845年にはロ短調のピアノ協奏曲を作曲・初演しましたが、この作品は現在失われています。
卒業後、彼は母校である王立音楽アカデミーのピアノ科教授として長年にわたり教鞭を執り、トバイアス・マテイやヘンリー・ウッドをはじめとする多くの優秀な音楽家を育成しました。作曲家としては大量のピアノ曲を残しており、当時の多くのイギリス人音楽家と同様にメンデルスゾーンを理想のモデルとした、親しみやすく美しく明朗な作風で知られています。1905年9月2日にロンドンで79歳で亡くなるまで、英国のピアノ教育および音楽界の発展に大きく貢献しました。
【本日のご紹介曲:協奏的小品ホ短調(Concertstück in E Minor)】
1881年に作曲・出版された『Concertstück in E Minor』は、現存するマクファーレン唯一のピアノとオーケストラのための作品です。本作は、名興行主ウィルヘルム・クーエの娘であり、マクファーレンの弟子でもあったナネット・クーエに捧げられ、同年のブライトン音楽祭にて彼女の手によって初演されたと伝えられています。
曲は暗いホ短調で始まりますが、すぐに明るいホ長調へと転じ、メンデルスゾーンの『無言歌』を思わせる温かく美しい旋律がピアノによって奏でられます。古典的な枠組みを守りつつも、巧みな転調やロマン派らしい情緒にあふれており、ロマン派ピアノ協奏曲の魅力をコンパクトに凝縮した佳作です。
【聴きどころ】
1)暗雲から光へ挿し込む冒頭の劇的な転換
管楽器と弦楽器が演奏する重々しく暗いホ短調のアジタート風なオープニングから、突然ホ長調へと鮮やかに転調し、ピアノが可憐で澄んだ「本当の主テーマ」を奏で始めるドラマチックな対比が鮮やかです。
2)メンデルスゾーンを思わせる「無言歌」スタイルの気品ある旋律
ピアノが奏でる主テーマや主調・属調で現れる歌心あふれる旋律線は、まさにメンデルスゾーンの『無言歌』のような上品さと流麗さに満ちており、豊かなピアノの伴奏形とともに心に響きます。
3)クライマックスへ向けたダイナミックなオクターヴと転調の妙
曲の終盤では、フィナーレを予感させるピアノのトリルがハ長調のトゥッティ(全体演奏)によって不意に中断されるなど、聴き手を惹きつける転調のサプライズが仕込まれています。最後はピアノの力強いダブル・オクターヴの跳躍によって迫力あるフィナーレへと一気に駆け抜けます。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
マクファーレン、ウォルター:協奏的小品ホ短調
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