一日一曲(1368)ラヴェル、モーリス:ヴァイオリンソナタ
本日は、生誕150年(1875年3月7日生)を迎えらえたフランスの作曲家、モーリス・ラヴェルさん特集の2回目です。
1900年から5回にわたって、ラヴェルさんは有名なローマ大賞を勝ち取ろうと挑戦しました。1901年の2回目の挑戦では3位に終わり、翌1902年と1903年はいずれも本選迄進むも選外。1904年はエントリーを見送り、年齢制限ギリギリの1905年の挑戦に賭けましたが、なんと予選段階で落選という、大番狂わせ?の結果となりました。1901年作曲のピアノ曲「水野戯れ」などで有名作曲家となっていたラヴェルさんのこの結果は、大スキャンダルとなりました。既に高い評価を得ている作曲家が予選すら通らないのはおかしい、と様々な方面から抗議の声が上がりました。先輩・同僚の作曲家や芸術家、果ては一般市民からも声が上がったそうです。原因として、ラヴェルさんがわざわざ楽典の禁則を外れた作曲を行ったことも影響しているのですが、この年の本選に進んだ6名全員が審査員に名を連ねていたパリ音楽院作曲科のルヌヴー教授クラスの学生であった、ということで、政治的に選考がゆがめられているのでは、という疑惑が、深層なのではないかと総括されています。後年このことは「ラヴェル事件」と呼ばれるようになりました。すったもんだがありましたが、結局ラヴェルさんはローマ大賞をかくとくすることはできませんでした。ただし、この事件でラヴェルさんの名はさらに上がり、更に活躍することとなりました。後年、有名作曲家として押しも押されぬ存在となったラヴェルさんに、フランス政府は何度も勲章を授けようとしたのですが、本件がトラウマになってしまったのか、ラヴェルさんは勲章を受け取ることはありませんでした。
本日は、昨日若いころのヴァイオリンソナタをご紹介した流れで、そのソナタから30年後に書かれた「ヴァイオリンソナタ」をご紹介します。
こちらは、ラヴェルさんの室内楽の代表作でもあり、フランスのヴァイオリンソナタの中でも傑作の一曲に位置付けられています。特に、ジャズを取り入れた第2楽章の人気が高く、演奏会でも第2楽章終了時に拍手が起こることもしばしばあります。個人的には、第1楽章の終わりころ、ヴァイオリンが息の長いメロディを奏でるところ、つづいて終わり近くでヴァイオリンが静かに上昇していき、ピアノがぽつぽつと和音を添えていく部分などに心を打たれます。第3楽章は、いったん完成されたものが「第1楽章に似ている」という理由で破棄され、現行の「無窮動」に差し替えられた、とのこと。差し替え前がどんな曲だったのか、興味深いところです。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ラヴェル、モーリス:ヴァイオリンソナタ