一日一曲(1784)バート、フランシス:ジャン・アンリ・ファーブルへのオマージュ

 本日は、生誕100年(1926年4月28日)を迎えらえたイギリスの作曲家、フランシス・バートさんの曲をご紹介します。

【フランシス・バート:ウィーンを拠点に活動し、オペラから電子音楽まで色彩豊かな音響と緻密な論理を融合させたイギリス出身の奇才】
 フランシス・バート(Francis Burt)は、1926年4月28日にイギリスのロンドンで産声を上げました。ロンドンの王立音楽大学でハワード・ファーガソンに師事し、作曲の基礎を徹底的に叩き込まれます。その後、1954年にドイツのベルリンへ渡り、当代随一の理論派であったボリス・ブラッハーのもとで研鑽を積みました。このベルリン時代に培われた緻密な構成力と、複雑なリズムを制御する技法は、その後の彼の作風を決定づける重要な礎となりました。
 1956年、バートはウィーンに移住し、この音楽の都を生涯の拠点と定めます。彼はオーストリアの音楽文化に深く溶け込み、1973年にはウィーン国立音楽大学(現在のウィーン国立音楽演劇大学)の教授に就任しました。バートは教育者として非常に情熱的であり、多くの優れた門下生を世に送り出すとともに、現代音楽の普及に尽力しました。彼の代表作には、ベン・ジョンソンの戯曲に基づくオペラ『ヴォルポーネ(Volpone)』や、劇的な緊張感に満ちたバレエ『バーナバス(The Golem)』などがあり、伝統的な劇構成と現代的な音響を対比させる手法で国際的な評価を確立しました。
 晩年もその創作意欲は衰えることなく、緻密な知性と豊かな感性が共存する独自の音楽世界を深化させ続けました。フランシス・バートは2012年10月3日、半世紀以上にわたって愛し、活動の場としたオーストリアのウィーンにて、86歳でその輝かしい生涯を閉じました。

【本日のご紹介曲:ジャン・アンリ・ファーブルへのオマージュ(Hommage à Jean-Henri Fabre)】
 この作品は1991年に、フルート、クラリネット、バイオリン、チェロ、ピアノという5つの楽器の編成(アンサンブル)のために作曲されました。タイトルにあるジャン・アンリ・ファーブルは、『昆虫記』で知られるフランスの博物学者です。バートはこの曲の中で、ファーブルが冷徹かつ愛情深い眼差しで捉えた昆虫たちの生態や、ミクロの世界に潜む生命の律動を、純粋な音の動きとして描き出しました。

【聴きどころ】
1)予測不能な昆虫のダイナミズム
 昆虫が突然飛び立ったり、急に動きを止めたりするような、予測のつかないリズムの変化が特徴です。各楽器が刻む断片的なフレーズが、生き物たちの独特な「間(ま)」を表現しています。
2)5つの楽器によるミクロの対話
 5つの楽器が対等に、時に重なり、時に反発し合う様子は、自然界の多様な種が共生する姿を連想させます。繊細な音色が重なり合って生まれる、透明感のある響きに注目してください。
3)静寂の中に宿る生命感
 激しい動きの合間に訪れる静かなパッセージには、ファーブルがじっと息を潜めて観察していた南フランスの乾いた空気感や、自然界の神秘が凝縮されています。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
バート、フランシス:ジャン・アンリ・ファーブルへのオマージュ

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