一日一曲(1747)マックスウェル・デイヴィス、ピーター:ストロムネスへの別れ
本日は、没後10年(2016年3月14日没)を迎えらえたイギリスの作曲家、ピーター・マックスウェル・デイヴィスさんの曲をご紹介します。
【ピーター・マックスウェル・デイヴィス:前衛的な衝撃からスコットランドの自然への回帰まで、多面的な音楽世界を築いたイギリス現代音楽の巨匠】
サー・ピーター・マックスウェル・デイヴィス(Sir Peter Maxwell Davies)は、1934年9月8日、イギリスのランカシャー州サルフォードに生まれました。マンチェスター王立音楽大学で学び、同世代のハリソン・バートウィッスルらと共に「マンチェスター楽派」を結成した彼は、戦後イギリス音楽界に革命を起こす旗手として頭角を現します。初期の彼は、表現主義的で過激な、時に「狂気」を孕んだ前衛的な作風で知られ、聴衆に強烈な衝撃を与え続けました。
大きな転機が訪れたのは1971年のことです。都会の喧騒を離れ、スコットランド北端の孤島、オークニー諸島へと移住しました。この地での生活は彼の創作活動に決定的な変化をもたらします。厳しいながらも美しい自然、そして北方の豊かな歴史や伝承に深く根ざした音楽を書くようになり、かつての刺々しさは、澄み切った透明感と深い叙情性へと昇華されていきました。
1987年にナイトの称号を授与され、2004年には王室に仕える「女王の音楽師範(Master of the Queen’s Music)(イギリス王室に代々伝わる非常に名誉ある職位(かつてはエルガーなども任命されました))」という最高の名誉に任命されるなど、名実ともに国民的作曲家となりました。また、後進の育成にも尽力し、オークニー諸島で「セント・マグナス音楽祭」を創設するなど、地域の文化振興にも多大な貢献を果たしました。晩年まで旺盛な創作意欲は衰えず、交響曲からオペラ、教育的な作品まで幅広い足跡を残しましたが、2016年3月14日、愛したオークニー諸島のホイ島にて81歳でその生涯を閉じました。
【本日のご紹介曲:ストロムネスへの別れ(Farewell to Stromness)】
1980年に発表されたこのピアノ独奏曲は、もともと『イエロー・ケーキ・レヴュー』という、オークニー諸島でのウラン採掘計画に対する抗議運動のために書かれた舞台作品の間奏曲でした。曲名の「ストロムネス」は島内の美しい町の名前であり、採掘による環境破壊で故郷を去らねばならなくなるかもしれない、という悲痛な思いが込められています。この曲はわずか5分ほどの小品ですので、家事や仕事の合間にぜひ耳を傾けてみてください。
【聴きどころ】
1)心に響く「別れの歩み」
左手の刻む一定のリズムは、愛する土地を一歩一歩踏みしめて去る「歩み」そのものです。淡々とした足取りの中に、言葉にできない寂しさが滲んでいます。
2)古典的な気品と現代の孤独
バロック時代の舞曲を思わせるような端正なメロディが特徴です。難解な音は一つもありませんが、そのシンプルな美しさの中に、現代を生きる私たちが共感できる深い孤独感が宿っています。
3)静寂が語る強いメッセージ
激しく抗議の声を上げるのではなく、ただ静かに、失われるかもしれない美しさを描き出しています。その「静寂の力」が、かえって聴く者の心に強い印象を残します。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
マックスウェル・デイヴィス、ピーター:ストロムネスへの別れ
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