一日一曲(1920)フィリドール、アンヌ・ダニカン:リコーダーソナタ ニ短調

 本日は、フィリドール一族ご紹介の最終日(5日目)となります。昨日ご紹介したジャック・ダニカン・フィリドールの次男であり、パリの歴史的な演奏会組織「コンセール・スピリチュエル」の創設者としても知られるアンヌ・ダニカン・フィリドールさんを取り上げます。

【アンヌ・ダニカン・フィリドール:王室内楽団の輝かしい奏者にとどまらず、公衆コンサートの先駆け「コンセール・スピリチュエル」を創設して音楽史に新たな時代を切り拓いたパイオニア】
 アンヌ・ダニカン・フィリドール(Anne Danican Philidor)は、1681年4月11日にフランスのパリで生まれました。「アンヌ」という名は男性名としても用いられたもので、父ジャックや伯父アンドレら音楽一族の伝統を受け継ぎ、幼少期から卓越した音楽の才能を示しました。1698年、わずか17歳でルイ14世の「王室軍楽隊(Grande Écurie)」のオーボエ奏者に就任すると、1704年には王室室内楽団(Musiqueの風/Chambre du Roi)や王室礼拝堂の奏者にも抜擢されました。彼はオーボエやフルートの優れた演奏家・作曲家として多くの舞曲や組曲、宗教曲を手掛け、1712年には全5幕のオペラ『愛の犠牲(Le Triomphe de l’Amour)』を制作して高い評価を得ます。しかし、彼の最大の功績は1725年にパリのチュイルリー宮殿で「コンセール・スピリチュエル(Concert Spirituel)」を立ち上げたことにあります。宗教的祝日などでオペラ座が休業する期間に一般市民へ開かれたこの公開演奏会は、後のクラシック音楽界における興行演奏会の礎となりました。音楽の革新者として多大な影響を残した彼は、1728年10月8日にパリにてその生涯を閉じました。

【本日のご紹介曲:リコーダーソナタ ニ短調(Sonata pour la Flûte à bec in D minor, 1712年出版)】
 1712年にパリで出版された『フルート、オーボエ、バイオリンのためのフルート(リコーダー)ソナタ集』に収められた代表作です。フランス古典バロックの優美なスタイルに、イタリア風の対位法的な厳格さを融合させた作品で、リコーダー(またはフラウト・トラヴェルソ)と通奏低音のために書かれています。

【聴きどころ】
1)2つの「フーガ」が示す洗練された対位法技法
 本ソナタは全5楽章で構成されていますが、第2楽章と最終第5楽章にそれぞれ「フーガ(Fugue)」が配置されています。リコーダーと通奏低音(ヴィオラ・ダ・ガンバやチェンバロ)が主題を鮮やかに追いかける立体的な対話が見事です。

2)フランス宮廷音楽特有の繊細な情緒と気品
 冒頭の緩やかな「ロンマン(Lentement)」や第3楽章の舞曲「クーラント(Courante)」など、17世紀から18世紀初頭のフランス音楽が持つメランコリックな陰影と、洗練された品格が美しく表現されています。

3)アーティキュレーションを指定した独創的な第4楽章
 第4楽章「レ・ノート・エガル・エ・デタシェ(Les notes égales et detachez)」は、「均等な音符で、音を切り離して」という意味を持ちます。イネガル(音符を不均等に揺らすバロック・フランス風奏法)をあえて外し、歯切れよく正確なリズムで演奏させる指定が施された実にユニークな楽章です。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
フィリドール、アンヌ・ダニカン:リコーダーソナタ ニ短調

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