一日一曲(1917)フィリドール、アンドレ・ダニカン:三つの高音部オーボエのための王の行進曲
本日は、昨日ご紹介した作曲家の父親の作曲家、アンドレ・ダニカン・フィリドールさんの曲をご紹介します。なお、本日から4日間(昨日を含めると5日間)、フィリドール一族をご紹介いたします。
【アンドレ・ダニカン・フィリドール:ブルボン朝最盛期、ヴェルサイユ宮殿を揺るがした王室軍楽隊の「響き」を司り、後世に膨大な譜面を書き残した楽譜収集の巨匠】
アンドレ・ダニカン・フィリドール(Philidor l’Aîné / 父フィリドール)は、1652年頃(1652年11月30日受洗)にフランスのマント=ラ=ジョリーで生まれました。音楽家を多数輩出した名門フィリドール一族の中心人物であり、1730年8月11日にドルーでその生涯を閉じました。
幼少期から優れた音楽的才能を発揮した彼は、太陽王ルイ14世の治世下において王室軍楽隊(Grande Écurie:王室厩舎音楽隊)の「グランド・オーボエ(Grands Hautbois)」奏者としてキャリアをスタートさせました。管楽器奏者として目覚ましい活躍を見せる傍ら、王室礼拝堂(Chapelle royale)の演奏家としても登用され、ルイ14世から厚い信頼を寄せられます。宮廷での地位を固めた彼は、儀式や軍事パレード、王太子(グランド・ドーファン)が主催する騎馬劇(カルーセル)のために、数多くの威風堂々たる行進曲やファンファーレを作曲・編曲しました。
彼の業績の中で最も歴史的価値が高いのは、王室音楽の「保管人(Garde de la bibliothèque de musique du Roi)」としての活動です。彼は自身や同僚の作品にとどまらず、ジャン=バティスト・リュリをはじめとする先達のオペラや宗教曲、さらには軍隊の伝統的なドラム・リズムに至るまで、膨大な楽譜を手写しして整理・保存しました。この「フィリドール・コレクション」と呼ばれる資料群は、17世紀フランス宮廷音楽の姿を今日に伝えるかけがえのない文化遺産となっています。
このような音楽への献身と記録の精神は、彼から始まる一族の血脈へと脈々と受け継がれていきました。後にオペラ作曲家およびチェスプレイヤーとして大成する息子のフランソワ=アンドレ(François-André)をはじめ、共に王室で活躍した弟のジャック(Jacques)、その子供たちであるピエール(Pierre)やアンヌ(Anne)といった次世代の音楽家たちへ、フィリドール家の豊かな音楽的才能と宮廷における誇り高き伝統は見事に繋がれていくことになります。
【本日のご紹介曲:三つの高音部オーボエのための王の行進曲】
本曲は1679年に作曲されました。太陽王ルイ14世の軍勢が威風堂々と行進する姿を演出するために書かれた儀式用行進曲です。当時の王室軍楽隊(Grande Écurie)の中核を担っていたオーボエ合奏(Bande de hautbois)と軍用太鼓(tambours)のために作られており、屋外の開けた空間でも響き渡る高らかで力強いサウンドが印象的な作品です。
【聴きどころ】
1)最高声部を担う3管のオーボエの華やかな交錯
曲名にある「3 dessus(3つの上声部)」の通り、高音を担当する3台のオーボエが旋律を重ね合い、明るく洗練されたファンファーレ風の響きを作り出しています。
2)王室軍楽隊特有のリズミカルな太鼓の打音
当時のフランス軍の歩調を整えるために打ち鳴らされた軍用太鼓の堅実で躍動的なリズムが、オーボエのメロディを力強く下支えしています。
3)バロック・オーボエアンサンブルならではの壮麗で素朴な音色
現代のオーボエとは一味違う、バロック期特有の表情豊かな木管の質感が、ヴェルサイユの野外宮廷行事の賑わいと威厳をダイレクトに伝えてくれます。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
フィリドール、アンドレ・ダニカン:三つの高音部オーボエのための王の行進曲
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