一日一曲(1958)ナーヴァ、アントニオ:ギターソナタ

 本日は、没後200年(1826年10月19日没)を迎えられたイタリアの作曲家兼ギタリスト、アントニオ・ナーヴァさんの曲をご紹介します。

【アントニオ・ナーヴァ:歌う旋律と軽やかな技巧をギターに託し、《四季》で創業期リコルディのカタログ第1号を飾った、19世紀初頭ミラノの「ギター音楽の開拓者」】
 アントニオ・マリア・ナーヴァ(Antonio Maria Nava)は、1775年頃、イタリアのミラノに生まれたギタリスト、作曲家、歌手、声楽教師です。19世紀初頭のイタリアで活躍した代表的なギタリスト=作曲家の一人で、主としてミラノを中心に活動しました。従来の資料では、パリやロンドン、1812年頃のドイツでも活動したとされています。息子のガエターノ・ナーヴァ(1802~1875)も音楽家となり、父からギターと声楽の手ほどきを受けました。
 ナーヴァの名を音楽史に刻んだのが、1808年に出版されたギター独奏のための4つのソナタ《一年の四季 Le stagioni dell’anno》です。これは作品4~7からなり、創業したばかりのジョヴァンニ・リコルディの出版カタログで第1号となりました。のちに世界的なオペラ出版社へ成長するリコルディの歴史が、実はギター作品から始まったというのは興味深いところです。
 ナーヴァはその後もギター独奏曲を中心に、声とギターのためのアリエッタ、フルートとギターの室内楽、変奏曲、幻想曲など多数の作品を書き、ギター教則書も残しました。その音楽には、当時のイタリア・オペラにも通じる歌心と、家庭やサロンで親しまれたギターならではの親密さが共存しています。1826年10月19日、故郷ミラノで亡くなりました。

【本日のご紹介曲:ギターソナタ Op.10】
 本曲は、1810年頃にミラノのアントニオ・モンツィーノから出版されたとみられるギター独奏曲で、ニ短調、Adagio-Allegroという二つの部分からなる、演奏時間約5分の凝縮された作品です。ミラノのアントニオ・モンツィーノから刊行された3ページの初期楽譜が現存しています。
 冒頭のAdagioでは、独奏ギターがまるで声楽曲を歌うように、落ち着いた旋律を紡いでいきます。ナーヴァが声楽教師でもあったことを思わせる、息の長いフレージングと柔らかな抒情性が魅力です。それに続くAllegroでは空気が一変し、軽快なリズムと流れるような音型によってギターらしい機動力が前面に現れます。古典派的な均整を保ちながら、その内側には19世紀初頭らしい感情の陰影も感じられ、古典派から初期ロマン派へ向かう時代のギター音楽を小さな器に封じ込めたような作品です。

【聴きどころ】
1)Adagioの「ギターが歌う」旋律
 まず耳を傾けたいのは、冒頭の旋律の呼吸です。一音一音を華やかに飾るというより、フレーズ全体が一つの歌として流れていきます。声楽教師でもあったナーヴァならでは、と想像したくなる部分で、音が消えていくギターという楽器でどのように旋律を「つなげて」聴かせるかにも注目です。

2)AdagioからAllegroへ、わずか5分の中の鮮やかな転換
 静かで内省的なAdagioから、Allegroに入った瞬間に音楽の重心がふっと前へ動きます。この「歌」から「運動」への転換が作品最大の仕掛け。大規模なソナタのように長い展開を行わず、二つの性格を明快に対置することで、小品ながらドラマを生み出しています。

3)1本のギターの中に現れる旋律・伴奏・低音の立体感
 旋律だけを追うのではなく、その下で動く低音や和音にも耳を向けてみてください。一本のギターが歌い手と伴奏者を同時に務めるように、複数の役割を行き来します。華美な超絶技巧ではなく、限られた音の中から音楽を立体的に立ち上げる書法こそ、この曲の隠れた面白さです。

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ナーヴァ、アントニオ:ギターソナタ

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