一日一曲(1914)ハリソン、マイケル:リヴェレーション
本日は、本年(2026年)4月17日に逝去されました作曲家兼ピアニスト、マイケル・ハリソンさんの曲をご紹介します。
【マイケル・ハリソン:純正律の美をグランドピアノ上に甦らせ、東西の響きを融合させた音の探求者】
アメリカの作曲家兼ピアニストであるマイケル・ハリソン(Michael Harrison)は、1958年10月24日、ペンシルベニア州ブリンマーに生まれました。数学者の父と実験物理学者の祖父という学術的な家庭環境で育った彼は、幼少期からピアノを学び、オレゴン大学で作曲の学士号を取得しました。
卒業後にニューヨークへ渡ったハリソンは、ミニマリズムの巨匠ラ・モンテ・ヤンに師事します。ヤンのロフトで生活しながら彼の代表作『ウェル・チューンド・ピアノ』の独占調律師を務め、作曲者以外で唯一この大曲の演奏を許されるほどの信頼を得ました。また、北インド古典音楽の巨匠パンディット・プラン・ナートやウスタッド・マシュクール・アリ・カーンに長年弟子入りし、伝統的なラーガ(旋律法)を修得しました。
1986年には1オクターブに24の音程を持つ「ハーモニック・ピアノ」を独自開発し、純正律(Just Intonation)とマイクロトナリティの分野で革新的な足跡を残します。マンハッタン音楽院で修士号を取得した後は、アメリカ・インド古典音楽アカデミーの設立や後進の指導にも務め、西洋の構造美と東洋の精神性を融合させた神秘的な音響世界を築き上げました。晩年まで作品制作やプロデュースに精力的に取り組みましたが、すい臓がんの合併症のため、2026年4月17日、ニューヨークのマンハッタンにて67歳で息を引き取りました。
【本日のご紹介曲:リヴェレーション(Revelation: Music in Pure Intonation)】
2001年から2005年(CDリリースは2007年)にかけて制作された、ハリソンの代表作にして独奏ピアノのための大曲です。通常の平均律ではなく、精密に純正律へ調律されたスタインウェイのグランドピアノ1台を用いて演奏されます。特定の音程比率が美しく響き合うよう緻密に計算された本作品は、波のように押し寄せる「倍音の雲(Tone Cloud)」とミニマルな律動が重なり合い、ピアノという楽器の音響的な限界を拡張した傑作として高い評価を受けました。
【聴きどころ】
1)純正律がもたらす澄み切った和声の共鳴
平均律特有のうねり(濁り)が完全に取り払われた、純正な音程同士が重なり合う透明感あふれる響きです。和音が鳴った瞬間に立ち上る澄み切った倍音の美しさは、まるで空間そのものが浄化されていくような感覚を与えてくれます。
2)音の波が重なり合う「トーン・クラウド(Tone Cloud)」
楽曲中に何度も現れる「トーン・クラウド」のパートでは、両手で高速かつ繊細に反復されるアルペジオが重なり合い、音の粒子が立体的な雲となって広がっていきます。電子音響やオーバーダビングを一切使用していないにもかかわらず、ピアノ1台から響いているとは思えない重厚で幻想的な音響空間が構築されます。
3)インド音楽とミニマリズムが交差する神秘的なドローンと律動
長年学んだ北インド古典音楽のラーガの旋律感やドローンの思想と、アメリカン・ミニマリズムの持続・反復構造が見事に結実しています。瞑想的な静寂から躍動的なパルスへと変化していくドラマティックな展開も魅力です。
本日は作曲者自身のピアノの演奏でお楽しみください。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
ハリソン、マイケル:リヴェレーション
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