一日一曲(1364)モシュコフスキ、モーリッツ:ピアノを弾くアントン・ノッテンケッチャー

 本日は、没後100年(1925年3月4日没)を迎えらえたポーランドのピアニスト兼作曲家、モーリッツ・モシュコフスキさんの曲をご紹介します。

 モシュコフスキさんは1854年にプロイセン王国のブレスラウ(現ポーランドのヴロツワフ)で生まれました。幼い頃から才能を示すようになり、1865年から家庭で音楽教育を受け始めました。その後、一家はドレスデンに移り住み、モシュコフスキさんは音楽院に入学してピアノの修行を継続しました。1869年にはベルリンに留学、シュテルン音楽院でピアノと作曲を学び、続いて新音楽アカデミー(Neue Akademie der Tonkunst)において、作曲と管弦楽法を学びました。1871年には音楽アカデミーの教員となり、ヴァイオリニストとしての成功を目指してその管弦楽団の第1ヴァイオリンで演奏することもあったそうです。その後、1873年に初めてピアニストとして成功を収め、まもなく近隣の都市を巡演して経験を積むと同時に名を上げていきました。ここからはピアニストを主軸に活躍することとなりました。1875年からはベルリン音楽院の教員となり、後進の指導にも熱心に当たられました。ヨーロッパ中を演奏旅行してまわり、傑出したピアニスト、素晴らしい作曲家として名声を得ると同時に、指揮者としても一目置かれるようになっていきました。1880年代半ば頃からモシュコフスキさんは腕の神経の異常に苦しむようになり、リサイタルを行うことが次第に難しくなっていきました。この頃からリサイタルの代わりに作曲、教育、指揮活動に力を入れるようになりました。この頃は富も名声も手に入れ、教師として引っ張りだこで活躍されました。いつでも野心溢れる音楽家たちのために親身に時間を割いていたそうです。が、年月が過ぎ去り、20世紀に入ると健康状態の悪化と共に次第に人気もかげりがみられるようになりました。また、時代の流れについていくことも難しくなってきたのでしょう、この頃には作曲の弟子を取るのを止めてしまいました。「彼らは頭のおかしい芸術家のように作曲をしたがるんだ。スクリャービンやシェーンベルク、ドビュッシー、サティみたいにね・・・。」と語られています。私生活では1910年に2番目の妻が娘を連れて離婚し、シュコフスキさんの親友と一緒になってしまうという事件も勃発します。モシュコフスキさんはこの私生活の悲劇から、ついに完全に立ち直ることはできませんでした。さらに悪いことは重なります。全ての著作権を売却し、ドイツ、ポーランド、ロシアの公債につぎ込んだのですが、第一次世界大戦勃発により全てが失われてしまいました。失意と貧困の中、1925年3月4日、パリで70歳の生涯と閉じられました。

 本日の曲はピアノ独奏曲「ピアノを弾くアントン・ノッテンケッチャー」です。
 モシュコフスキさんのお兄さんのアレクサンダー・モシュコフスキさんは、風刺作家・作家・哲学者の肩書を持つ方だったそうですが、そのお兄さんの著書の中に「アントン・ノッテンケッチャー」という作品があるようです(amazonで見つけました。こちら)。これと関係があるように思うのですが、良く分かりませんでした。
 曲は、変奏曲形式で、主題の後に8つの変奏が続きます。それぞれの変奏には作曲家の名前が付けられており、その作曲家が変奏するとしたらこうなるだろう、という変奏をモシュコフスキさんがひねり出しています。

 第1変奏:チェルニー
  ピアノ教則本でおなじみの作曲家。練習曲らしい雰囲気が良く出ている変奏です。
 第2変奏:クレメンティ
  こちらもピアノのお稽古でよく出てくる作曲家。先ほどより少し高度な技が必要になっています。
 第3変奏:J.S.バッハ
  フーガの大家らしい、渋い変奏曲。バッハらしい変奏は個人的に一番面白く聴けました。
 第4変奏:ブラームス
  渋いブラームスの特徴が良く出ています。分厚い音の重なりもまさに本家そっくり!
 第5変奏:ウェーバー
  軽やかな流れはまさにウェーバーさんそのものです。
 第6変奏:ショパン
  英雄ポロネーズと重ねたのはちょっとやりすぎ?!
 第7変奏:ルビンシュタイン
  大ピアニストらしい技巧的な変奏です。個人的にルビンシュタインさんの特徴を掴むほど
  ルビンシュタインさんを聴き込んでいないので、逆に「こんな感じなのか」と思いました。
 第8変奏:リスト
  出だしは?でしたが、途中の派手な展開はリストさんの特徴が良く出ています。

 モシュコフスキさんの観察力・分析力そして作曲の技術の高さに拍手!

NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリ)より(NML会員以外の方でも無料で試聴できます)
モシュコフスキ、モーリッツ:Anton Notenquetscher am Klavier

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